【徹底解剖】MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)
分散投資を考えるなら、全世界の株式に投資するものありかなって思うんだけど……。
そうだね。カントリーリスクの軽減を考えるなら、1か国の株式を保有しているよりは、数か国の株式を保有していた方が良いね。そして、極論は全世界の株式を保有していることがベストってことだね。
でも、世界には200近くの国があるって話だし、全世界の株式を持つなんて現実的には不可能だよ。
たしかに、全世界の株式を個別に集めようとしたらとんでもないことになるね。それに、管理も大変だ。でも、投資信託の世界では、1商品を購入するだけで全世界の株式に投資することもできるんだ。
へー。そーなんだ! でも、投資信託って言ったら、指標に連動して、もしくは指標を上回るように運用するのが基本だと思うんだけど、全世界の株式を対象とした指標なんてあるの?
うん。全世界の株式を対象とした指標はいくつかあるんだけど、最も有名なものはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスって指標なんだ。
じゃー、そのMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスについて、もっと詳しく教えてよ。
OK。まずは概要から説明していくね。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI) 先進国23か国と新興国26か国(2018年12月末)の49か国の大型株と中型株で構成される株価指数です。株式の総合投資収益を各市場の時価総額比率で加重平均して指数化したもので、世界の株式の時価総額(浮動株調整後)の約85%をカバーしています。世界全体の株価動向を知るのに広く利用されている株価指数で、11セクター・3,000を近くの銘柄で構成されています。世界的な指数算出会社のMSCI(モルガン スタンレー・キャピタル・インターナショナル)社が算出・公表しています。 |
約200の国々のうちの50か国か……。
指標の対象となる先進国・新興国、セクター、構成銘柄の数はその時の状況に応じて変動するんだ。だけど、常に世界の株式の時価総額の約85%をカバーしているんだ。
全世界の株式に投資する投資信託の指標としてはそれで充分ってこと?
何をもって充分とするかによるけど、全世界を対象とした株式投資の指標としては、世界的にも最も有名かつ利用されている指標であることは間違いないよ。
なるほどね。
では、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスをより詳しく見ていこう。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスを構成する代表的な銘柄
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスは、3,000近くの銘柄で構成されているってことだけど、さすがにトップ10を知っておいてもそんなに意味はないよね?
意味がないってことはないけど、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスに応じて投資する投資信託を選ぶってことは、分散投資を目的としているだろうから、1銘柄の影響がどうのこうので話していてもしょうがないね。
それなら、何を知っておいた方が良いのかな。
一番知っておくべきことは、構成銘柄の地域・国別のウエイトだろうね。どの地域・どの国の銘柄を多く組み入れているのか、そのウエイトはどの程度のものなのかを知っておくことで、目的としている「分散性の程度」がわかるんだよ。
ということは、地域・国別のウエイトに偏りがあるってことだね。早速、教えてよ。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスの地域・国別のウエイト(2022年6月)
地域・国 | ウエイト(%) |
米国 | 60.63 |
日本 | 5.45 |
中国 | 4.14 |
英国 | 3.90 |
カナダ | 3.18 |
その他の地域 | 22.70 |
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスの上位構成銘柄(2022年6月)
銘柄 | 地域・国 | ウエイト(%) |
Apple:アップル | 米国 | 4.01 |
Microsoft:マイクロソフト | 米国 | 3.29 |
Amazon.com:アマゾンドットコム | 米国 | 1.75 |
Alphabet A:アルファベット A | 米国 | 1.18 |
Alphabet C:アルファベット C | 米国 | 1.12 |
Tesla:テスラ | 米国 | 1.06 |
UnitedHealth Group:ユナイデッドヘルスグループ | 米国 | 0.87 |
Johnson & Johnson:ジョンソンエンドジョンソン | 米国 | 0.84 |
TAIWAN SEMICONDUCTOR MFG:台湾セミコンダクター | 台湾 | 0.71 |
NVIDIA:エヌビディア | 米国 | 0.68 |
米国の株式が全体の60%以上のウエイトを占めているんだね。
米国とカナダを合わせた北米で約65%、日本・中国・台湾と続く東アジアで約15%、英国・ドイツ・フランスと続く欧州で約10%、その他の地域で約10%といったところかな。
個別銘柄で見てもウエイトの上位は米国だらけだね。S&P500指数の上位構成銘柄とほとんど同じ感じ。
分散性が高いとはいえは、前提として投資性は保たなければならないわけだから、必然的に米国の株式のウエイトが高くなるんだ。世界情勢によって変動しているけど、当面はこの調子が続くかな。なんだったらウエイト70%になる可能性だってあるんだ。
チャート分析
2020年:新型コロナウイルスが世界を支配した年
- 2月:新型コロナウイルス(COVID-19・武漢肺炎)の流行により急落
- 3月:ニューヨークのロックダウンの影響により底をつく(384.04ポイント)
- 5月:ロックダウン解除による株式の買戻し
- 9月:米国の大統領選による先行きの不透明感から下落
- 11月:米国の大統領選の終結とワクチンの実用化への期待により上昇
- 11月:金融緩和も継続されて600ポイントを超える
S&P500指数とほとんど同じだね。
構成銘柄のウエイトの60%を米国の株式が占めているわけだから、当然といえば当然だね。加えて、ウエイト上位の日本やカナダ、英国の株式は、米国の株式市場の影響を強く受けるからなおさらだよ。
ということは、チャートの変動も米国の株式市場の動きを押さえておけばいいってことになるね。
そのとおり。ただし、S&P500指数なんかよりは米国以外の地域の状況の影響を受けるから、多少は米国以外にも目を向けておいた方が良いね。
2021年:コロナ・ショック後の歴史的な株高を経験した年
- 1月:米国の連邦議会議事堂の襲撃・占領とバイデン新大統領就任
- 5月:算出開始から初の700ポイントに
- 6月:世界多くの地域でワクチン接種率が50%以上に
- 8月:新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)の影響でやや停滞
- 10月:中国の大手不動産会社のデフォルト危機や原油価格の高騰に伴う下落
- 11月:米国の連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和の段階的縮小を決定
最高値は12月1日の758.49ポイントだね。
1年を通してほとんど下落することなかったんだ。だから、チャートの転換点を書き出すのも大変だった。
ほんと直線的に伸びてるよね。新型コロナウイルス後のボーナス期間と言われているのもわかる気がする。
指数のチャートでここまできれいな右肩上がりもそうそうないからね。でも、順調なチャートも2021年11月までなんだよ。
FRBが量的緩和の縮小を決めたから?
そういうこと。段階的な緩和で2022年は2021年ほどの伸びは期待できないと大方の投資家は考えていたんだ。まさかそれ以上に展開になるとは……。
2022年:世界的な原油高とロシアのウクライナ侵攻
- 原油高の影響で年初から徐々に下落。
- ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、5月に再び600ポイント台に。
2022年はまだ始まったばかりだから、今後の動向を注視していくしかないね。
金融緩和の縮小度合い、原油高、ウクライナ侵攻の帰結次第ということかな?
世界情勢の変化に伴う物価の上昇が現在進行形で進んでいるね。どちらも株式市場にはプラスにもマイナスにも起因するからバランスが大切だね。
加えて、ウクライナ侵攻(というよりはロシアの出方)次第で、世界の在り方や価値観が変わってくる可能性もあるよね。そうなったら、だれも予測できないようなチャートになっていくだろうね。
他の指数との比較
次はMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスと他の指数を比較してみよう! 改めて、2020年1月から2022年5月の日経平均株価のチャートを見てみよう。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスの2020年1月~2022年5月のチャート
2020年3月に底(384.04ポイント)をついてから、約14か月後の2021年5月700ポイント台に到達。そこからさらに伸び続け、約20か月後の2022年12月に過去最高の758.49ポイントを記録。以後は少しずつ下落し、2022年5月末時点で650ポイント付近になっている感じだね。
そのとおり。比較のポイントは大まかに言うと、①新型コロナウイルス第1波からの回復過程(2020年1月~2021年3月)と、②回復後から現在まで(2021年3月~2022年5月)の変化の2つを見ていくことになるよ。
日経平均株価(日経225)の2020年1月~2022年5月のチャート
日経平均株価は日本の代表的な株価指数だったよね。
そのとおり。日経平均株価とMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスを比較すると、日経平均株価が新型コロナウイルスの第1波の底(2020年3月)~2021年3月の間に停滞期間があるのに対して、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスはほとんど直線的に上昇しているね。
そうだね。これは米国の株式市場の影響を受けているからかな。
米国ではワクチン接種やWithコロナの浸透が早く、経済の停滞は日本よりも短期間で抑えられたんだよ。停滞したのも2020年の大統領選挙の時期だけだったし。
日経平均株価とMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスのチャートを並べても、比較のポイントになっている①のかたちは似ているけど、②のかたちは全然違うね。
S&P500指数の2020年1月~2022年5月のチャート
2つのチャートはほとんど同じ形になっているね。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスは、前にも説明したとおり、構成銘柄のウエイトの60%が米国の株式だし対、その他の地域も米国の株式市場の影響を受けている地域ばかりだからね。同じような方になるのは当然だよ。
でも、よーく見てみると、S&P500指数よりもMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスの方がより安定して伸びているように見えるね。
するどい。S&P500指数は米国の株式だけを対象とした指標だけど、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスは全世界を対象とした指標だからね。たとえば、S&P500指数は大統領選の影響で2020年9月~11月に停滞したけど、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスは他の地域の状況でわずかに相殺されて、緩やかな伸びの形になっているんだ。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスをベンチマークとする代表的な投資信託(つみたてNISA対応限定)
商品名 | 信託報酬 | トータルリターン(平均年率) |
たわらノーロード・全世界株式 | 0.1320% | 22.95% |
全世界株式インデックスファンド | 0.5280% | 18.17% |
野村・つみたて外国株投信 | 0.2090% | 17.47% |
三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド | 0.2750% | 25.00% |
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本) | 0.1144% | 15.05% |
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 0.1144% | 17.31% |
つみたて全世界株式 | 0.6600% | 28.87% |
つみたて米国株式(S&P500) | 0.2200% | 28.61% |
Smart-i Select 全世界株式インデックス | 0.1144% | ― |
Smart-i Select 全世界株式インデックス(除く日本) | 0.1144% | ― |
セゾン・資産形成の達人ファンド | 0.5720% | 13.18% |
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トータルリターンが年率30%以上になっている商品はないんだね。
バランス型の投資信託とまでは言わないけど、分散投資が目的の1つとなる指標に応じた商品だからね。一方で、信託報酬はかなり抑えられているよ。
分散性とコストの両面から見て優秀な指数ということだね。人気があるのも頷けるね。