適用事業報告

 

 

労働保険および社会保険の適用事業所を設置したときに作成する書類が、「適用事業報告」です。

労働者を1人でも雇っている事業所は、労働基準法上の適用事業所となります。

井上とまと

労働者には、正社員や無期雇用労働者のみならず、有期雇用労働者、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトなど、あらゆる雇用形態の者が含まれます。

適用事業所であるにもかかわらず、適用事業報告を提出しなかった場合、労働基準法の罰則規定が適用され、最大で30万円以下の罰金を科される可能性があります。しかし、適用事業報告が提出されていないことに対して、行政官庁が積極的に取り締まるケースはほとんどありません。

適用事業報告を提出しなかったことによる問題は、労働基準法の罰則規定が適用されることよりも、労働基準法に関連する労働安全衛生法や労働者災害補償保険法(労災保険法)が適用されなくなり、重大な労働災害が発生した場合に、事業主に刑事罰が科せられる可能性があることにあります。

適用事業所を設置すると、適用事業報告以外にも複数の届出書類を行政官庁に提出しなければならず、煩雑な作業の中で提出漏れが発生することもあります。適用事業報告も忘れずに提出しましょう。

 

適用事業報告の作成手順

 

それでは、適用事業報告を一緒に作成していきましょう。

今回は、「ベーカリー TOMATO」の事業主である「畑太郎(はたけたろう)」さんをモデルに進めていきます。

 

 

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事業の情報

①事業の種類は、労災保険率適用事業細目表に記されている「事業の種類」の中から、その事業所に該当するものを選んで記入します。ベーカリー TOMATOでは、パンの製造および販売を生業としています。そのため、事業の種類は「食料品製造業」と記入します。

②事業の名称は、そのまま記入します。ここでは「ベーカリー TOMATO」と記入します。

井上とまと

「ベーカリー TOMATO」は法人ではないため、「株式会社」などの法人格を記入する必要はありません。しかし、適用事業報告を提出する事業所が法人である場合は、事業の名称に法人格も記入します。

③事業の所在地および電話番号は、いずれもそのまま記入します。

事業の所在地について
店舗、社屋、事務所(以下、店舗など)を持つ場合は、事業の所在地はその店舗などがある住所を記入します。一方、店舗などを持たずに事業を経営している場合(フリーランスなど)は、自宅などの主たる活動拠点を記入します。
井上とまと

戸建の持ち家を「事業の所在地」に設定する場合は、問題になることはないでしょう。一方、マンションや賃貸住宅を「事業の所在地」に設定する場合は、余計な問題を防ぐため、管理会社や不動産屋に許可を取っておくといいでしょう。

事業の所在地について
複数の店舗などを持つ場合は、基本的にそれぞれの店舗などで適用事業報告を提出しなければなりません。一方、店舗などの事務処理を一括でするとき(事業の一括)は、主たる事務所がある場所の住所を記入します。店舗などを持つにもかかわらず、電話回線を引いていないというケースは稀だと思いますが、その場合は「電話番号」に自宅の固定電話や携帯電話の番号を記入することも可能です。

 

労働者数

①労働者数は、「通勤」の労働者と「寄宿」の労働者に区分けして、その数を記入します。一般的な労働者の数は、「通勤」の欄に記入します。一方、事業所に寄宿舎があり、かつその寄宿舎で寝食を供する労働者の数は、「寄宿」の欄に記入します。該当する労働者がいない場合は0と記入しても、未記入でもどちらでも構いません。総計も忘れずに記入します。ベーカリー TOMATOでは、「18歳以上の男性の従業員2名、同女性の従業員3名、高校生の女性従業員1名」を雇っています。

井上とまと

労働者には、前述のようにあらゆる雇用形態の労働者が含まれます。

 

適用年月日・備考

①適用年月日は、適用事業所を設置した日を記入します。

②備考は、何も記入しなくても構いませんが、直近で労働者数が増減したりする場合は、その旨を記入するといいでしょう。

 

欄外下

①欄外左上の日付を記入するところには、適用事業報告を提出する日を記入します。

②左下端の「___労働基準監督署長 殿」には、事業所がある地域を管轄する労働基準監督署の名称を記入します。ベーカリー TOMATOは、神奈川県川崎市高津区溝の口にありますから、ここでは「川﨑北」と記入します。

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管轄する「労働基準監督署」を記入してください。「公共職業安定所」ではありません。労働保険に関する手続きでは、提出先が「労働基準監督署」、「公共職業安定所」、「都道府県労働局」のいずれかに設定されていることが多く、手続きによって提出先が異なるため、記入する際には注意が必要です。

③使用者の情報は、事業所の名称、使用者(事業主)の職名、使用者(事業主)の氏名を記入します。最後に、事業所もしくは事業主の印鑑を押します。

 


 

以上で、適用事業報告の作成が終わりました。

適用事業報告の作成および提出を社会保険労務士に委託した場合は、欄外下に「社会保険労務士記載欄」が設けられた様式を使用してください。

 

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