健康保険 高額療養費支給申請書
健康保険の被保険者が高額療養費を申請するときに作成する書類が、「健康保険 高額療養費支給申請書(以下、高額療養費支給申請書)」です。
医療給付における自己負担金が著しく高額であるときは、高額療養費が支給されます。
高額療養費の額は、自己負担額が高額療養費算定基準額を超えたときに、その超えた分の金額となります。
高額療養費算定基準額は、次のような要件により、その額が変わります。
- 高額療養費を受ける者が70歳未満であるか70歳以上であるか
- 高額療養費を世帯で受ける場合は、その世帯の構成員が70歳未満の者のみであるか70歳以上の者のみであるか、または70歳未満の者と70歳以上の者が混在しているか
- (主に)被保険者の標準報酬月額
- 療養のあった月以前の12か月に高額療養費が支給されている月が3月以上あるか
- 外来(通院)か入院か
- 長期高額疾病(特定疾病)であるか
高額療養費算定基準額は上記のような複数の要件によりその額が異なります。ややこしいのでここでは割愛します。詳しくは厚生労働省のホームページなどで確認してください。
また、高額療養費は健康保険による医療費だけを対象としています。そのため、食費、生活費・光熱費、おむつ代、個室・特別室代、先進医療費などは、算定の対象となり得ません。
さらに、高額療養費には次のような制限も設けられています。
- 同一月に受けた療養に限る:たとえば、3月3日から4月20日まで療養を受けた場合は、3月3日から3月31日までの療養にかかるものと、4月1日から4月20日までの療養にかかるものとに区分されます。
- 被保険者または被扶養者を単位として算定する:被保険者、被扶養者それぞれにかかったものを別個に算定します。ただし、70歳以上の者については合算されることもあります。
- 一の病院から受けた療養であること:同一の病院、診療所、薬ごとに算定します。ただし、同一の病院であっても、歯科診療は別個に算定され、外来診療と通院診療も区分されます。
高額療養費支給申請書の作成手順
それでは、高額療養費支給申請書を一緒に作成していきましょう。
今回は、健康保険の被保険者である「金剛石光(こんごうせきひかる)」さんをモデルに進めていきます。
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被保険者情報
①被保険者証の記号・番号は、被保険者証に記載されている記号(事業所整理記号)と番号(被保険者整理番号)を記入します。数字は左詰めで記入します。
事業所整理記号 「数字2桁のカタカナまたは英数4桁以内」や「漢字+ひらがな」など、自治体ごとに異なる形式で表されます。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合は、事業所整理記号は健康保険証に記載された「記号」と変換可能 です。たとえば、「渋2いろは」という厚生年金保険の事業所整理記号は、全国健康保険協会(協会けんぽ)では「64010203」という数字になります。 |
被保険者整理番号 社会保険に加入したときに、会社内で1番から順に従業員に割り当てる番号です。新入社員など、新しく健康保険証を発行する場合は、直前に社会保険に加入した従業員の次の番号を採番します。従業員に被扶養者がいる場合は、従業員と同じ番号を割り当てます。 |
②生年月日は、左の▢に元号を、その後の6つの▢に年月日を記入します。元号は「1:昭和、2:平成、3:令和」のいずれかの番号を記入します。
③氏名は、漢字とフリガナで記入します。
④住所・電話番号は、郵便番号と電話番号を数字で記入し(左詰め)、住所を都道府県から記入します。
振込先指定口座
①金融機関名称は、そのまま記入します。
②預金種別は、「1:普通、2:当座、3:別段、4:通知」のいずれかの番号を記入します。
③口座番号は、そのまま記入します(左詰め)。
④口座名義は、フリガナで記入します。姓と名の間は1マス空け、゛濁点や小文字は1マスに記入します。
⑤口座名義の区分は、「1:被保険者、2:代理人」のいずれかの番号を記入します。「2:代理人」と記入した場合は、後述の「受取代理人の欄」に情報を記入します。
受取代理人の欄および欄外下
①受取代理人の欄は、「口座名義の区分」を「2:代理人」とした場合に、その者の氏名や生年月日、住所などを記入します。
被保険者の傷病が重い場合、被保険者ではなく、代理人に療養費が支給された方がいい場合もあります。そのようなときは、「口座名義の区分」を「2:代理人」とし、当該欄にその代理人の身分を証明します。
②個人番号(マイナンバー)記入欄は、被保険者証の記号・番号が不明な場合に記入します。被保険者証の記号・番号が記入されているときは、記入しない方がいいです。
③社会保険労務士記載欄は、本申請書などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。
申請内容A(裏面)
①被保険者氏名は、そのまま記入します。
②診療月は、左の▢に元号を、その後の4つの▢に年月を記入します。元号は「1:平成、2:令和」のいずれかの番号を記入します。
③受診者は、「1:被保険者、2:家族(被扶養者)」のいずれかの番号を記入します。
④氏名は、③の者の氏名を記入します。
④生年月日は、③の者の生年月日を記入します。「被保険者の生年月日」の規則を参考にして記入します。
⑤診療を受けた医療機関・薬局の【名称】および【所在地】は、いずれもそのまま記入します。
申請内容B(裏面)
①病気・ケガの別は、「1:病気(異常分娩含む)、2:ケガ(負傷)」のいずれかの番号を記入します。
「2:ケガ(負傷)」と記入した場合は、負傷原因届も併せて提出することになります。
②療養を受けた期間は、上段左の▢に元号を、その後の4つの□に年月を記入します。元号は「1:平成、2:令和」のいずれかの番号を記入します。下段の▢▢~▢▢には、上段の診療月における診療を受けた期間を記入します。令和3年9月1日~10日まで診療を受けた場合は、「2⃣ 0⃣3⃣0⃣9⃣ 0⃣1⃣~1⃣0⃣」と記入します。
③入院通院の別は、「1:入院、2:通院・その他」のいずれかの番号を記入します。
申請内容C(裏面)
①支払った額のうち、保険診療分の金額(自己負担額)は、保健医療機関で実際に支払った自己負担分の金額を記入します。また、自己負担額が不明の場合は、下欄の「自己負担額が不明の場合は支払った総額」にその金額を記入します。
個室・特別室代や自費診療などの保険診療の適用とならない金額については、①の額に含まれません。
②他の公的制度から、医療費の助成を受けていますかは、「1:はい、2:いいえ」のいずれかの番号を記入します。「1:はい」と記入した場合は、「助成を受けた制度の名称」や「自己負担分の助成の内容」も記入します。
他の公的制度の代表的なものに生活保護があります。生活保護の医療扶助を受けると、その人の資産や収入に応じて、自己負担分の全部または一部が免除されます。
③限度額適用認定証(限度額適用・標準負担額減額認定証)使用の有無は、「1:はい、2:いいえ」のいずれかの番号を記入します。
限度額適用認定証(限度額適用・標準負担額減額認定証) 高額療養費は、一度自己負担分を全額支払った後、高額療養費支給申請書を提出することで、自己負担限度額を超えた分の金銭が戻ってくる仕組みになっています。そのため、一時的にせよ高額の費用を立て替えることになるため、経済的な負担が大きくなります。あらかじめ、限度額適用認定証の交付を受け、医療機関の窓口に提示することで、一月ごとの支払額が自己負担限度額までにすることができるようになります。 |
高額療養費に該当する月(裏面)
診療月以前3年間に、高額療養費に該当する月が3か月以上ある場合、直近3か月分の診療月をご記入ください。は、高額療養費を受けた直近3か月を記入します。3か月以上ない場合(1か月や2か月の場合)は記入しなくても構いません。
以上で、高額療養費支給申請書の作成が終わりました。
高額療養費は、手術を受けた場合、長期入院している場合、通院回数が多い場合、介護保険も併用している場合には、非常に重要な制度になります。いずれの場合も、自己負担額が高額になりやすく、高額療養費の制度を使わないと、大きな負担を抱えることになるからです。
また、前述したように、高額療養費は一度自己負担額を支払った後、高額療養費支給申請書を作成して提出した場合に、高額療養費算定基準額を超えた分の金額が戻ってくる仕組みです。そのため、一時的にでも生活が困窮する可能性があるため、あらかじめ医療費が高額になると想定される場合には、限度額適用認定証(限度額適用・標準負担額減額認定証)の交付を受けておいた方が良いでしょう。