労働者災害補償保険 障害補償給付支給請求書
労働者災害補償保険(以下、労災保険)の障害(補償)給付を受けるときに作成する書類が、「労働者災害補償保険 障害補償給付支給請求書(以下、障害補償給付支給請求書)」です。
労働災害に係る負傷や疾病の治癒後、「障害等級」に該当する障害が残った場合に、労災保険によって(金銭的に)支援されます。これが労災保険における「障害(補償)給付」です。
労働災害が業務災害の場合は「障害補償年金」となり、通勤災害の場合は「障害年金」となります。
障害(補償)給付は、負傷や疾病の治癒(もしくは症状固定)した後でなければ受けることができません。また、労働ができる・できないは関係ありません。
障害(補償)給付は、該当する障害等級に応じて、年金または一時金(障害等級の第1級~第7級は年金、第8級~第14級は一時金)の金銭給付によって行われます。障害等級は厚生労働省のホームページなどの「障害等級表」に基づいて決定されます。
障害(補償)給付は、被災労働者が事業主の証明を受けて、労働災害に係る負傷や疾病の治癒後速やかに、障害補償給付支給請求書を事業所がある地域を管轄する労働基準監督署長に提出することで、受けることができるようになります。
障害補償給付請求書の作成手順
それでは、障害補償給付支給請求書を一緒に作成していきましょう。
今回は、「Bug’s Style 株式会社」の労働者である「蝶野蜚敏(ちょうのとびとし)」さんをモデルに進めていきます。
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被災労働者の基本情報
①労働保険番号は、事業所に振り出されている事業所番号を記入します。
労働保険番号 事業所(会社)が労働保険に加入したときに、労働基準監督署から振り出されるものです。番号は保険関係成立届で確認できますが、インターネット検索などでは確認できません。 |
ちなみに、その下欄の「年金証書の番号」は、労災保険から年金を受けている場合に、その番号記入します。
②労働者の氏名は、漢字とフリガナを記入し、「男・女」のいずれかの性別に〇を付けます。
③労働者の生年月日、④住所、⑤職種、⑥所属事業所名称・所在地は、いずれもそのまま記入します。住所にはフリガナも記入します。
⑦負傷又は発病年月日は、労働災害が発生した年月日および時刻を記入します。時刻は12時間表記です。
⑧傷病の治癒した年月日は、労働災害に係る負傷や疾病が治癒または症状固定した日を記入します。治癒または症状固定は、基本的に主治医の判断(証明)が必要になります。
災害の原因及び発生状況など
①災害の原因及び発生状況は、労働災害と認定されるかどうかの1つの判断材料になりますので、できるだけ詳細に記入します。特に、労働災害の発生場所、発生時の作業内容、発生時の環境、不安全な状況および有害な状態、労働災害の内容が明確になるように意識して記入します。
②平均賃金は、「平均賃金算定内訳」などを用いて、被災労働者の平均賃金を記入します。
平均賃金は、障害(補償)給付の額の基準となる給付基礎日額の計算に用いられます。
③特別賞与の総額(年間)は、前述の「傷病又は発病年月日」以前1年間の特別賞与の総額を記入します。
厚生年金保険等の受給関係
被災労働者が厚生年金の受給者である場合に記入します。障害(補償)給付を受ける被災労働者が、厚生年金の受給者でもある場合、併給調整(厚生年金の額を減額する調整)が行われます。
事業所の証明
①左上の日にちを記入するところには、前述の情報が正確であることを、事業所が証明した日を記入します。
②事業所の情報は、事業の名称、電話番号、事業所の所在地(郵便番号)、事業主の氏名を記入し、印鑑を押します。
金融機関の情報
①既存の障害がある場合にはその部位及び状態は、既存の障害がある場合に記入します。
②送付する書類その他の資料名は、労働災害に係る負傷や疾病の状態や、治癒または症状固定を示す書類などを添付する場合に、その書類の名称などを記入します。
*年金の払渡しを受けることを希望する金融機関又は郵便局は、金融機関または郵便局いずれかの情報を記入します。今回は、金融機関で年金の払渡しを受けることを希望します。
給付の内容 障害(補償)給付は現金が支給されます。しかし、現金は手渡しされるのではなく、金融機関への振込というかたちで行われます。そのため、振込先の金融機関の情報も記入しておく必要があります。 |
③名称は、年金の払渡しを受けることを希望する金融機関の名称と本店・支店名を記入します。
④預金通帳の記号番号は、「普通・当座」のいずれかの預金方式に〇を付け、口座番号を記入します。
欄外下
①には、本請求書が何の請求書であるかを示すために、該当する項目に〇を付けます。
①で〇を付けたものと、表題で〇を付けたものとに、ずれがないことを確認してください。
②左上の日にちを記入するところには、障害補償給付支給請求書を提出する日を記入します。
③「___労働基準監督署長 殿」には、事業所がある地域を管轄する労働基準監督署(長)の名称を記入します。「Bug’s Style 株式会社」は、愛知県名古屋市天白区にありますから、ここでは「名古屋東」と記入します。
④請求人・申請人の情報は、郵便番号、電話番号、住所、氏名を漏れなく記入し、印鑑を押します。また、個人番号(マイナンバー)も記入します。
⑤振り込みを希望する金融機関の情報は、前述の「年金の払渡しを受けることを希望する金融機関又は郵便局」の情報とずれがないように注意して記入します。
その他就業先の有無および社会保険労務士記載欄(裏面)
その他就業先の有無欄には、まず、その他の就業先の「有無」に〇を付けます。その他の就業先がない場合には、「無」に〇をつけて終わります。「有」に〇が付いた場合は、その他の情報を記入します。
社会保険労務士記載欄は、本請求書などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。
以上で、障害補償給付支給請求書の作成が終わりました。
「障害補償給付支給請求書(様式第10号)」は、業務災害における障害補償給付を受けるときに作成する書類です。一方、通勤災害における障害給付を受ける場合には、「障害給付支給請求書(様式第16号の7)」を作成します。
障害(補償)給付は、被災労働者の負傷または疾病が「治癒(症状固定)している」状態でなければ受けられません。そのため、「傷病の治癒した年月日」を起算日として、給付を受けることができるようになります。