健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届・70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届

 

 

健康保険および厚生年金保険の被保険者が育児休業を修了したときに作成する書類が、「健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届・70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届(以下、育児休業等終了時報酬月額変更届)」です。

育児休業等終了時報酬月額変更届は、育児休業の終了日の翌日から起算して2月を経過した日の属する月の翌日以後速やかに、日本年金機構または健康保険組合に提出しなければなりません。

育児休業の終了後は、育児などを理由として報酬が低下することも少なくありません。このとき、報酬は低下したにもかかわらず、保険料が報酬の低下前と変わらない額であると、被保険者の負担は相対的に大きくなっていまします。そのため、被保険者が申し出ることによって、「育児休業の終了日の翌日が属する月以後の3月間に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額を改定する」ことができます。これにより、育児休業期間後の被保険者の負担を軽減できるようになっています。

井上とまと

報酬月額の随時改定のときは、4月、5月、6月のうち、報酬支払の基礎となった日数が17日未満である月があるときは、改定することができませんでしたが、育児休業終了時の報酬月額の変更では、報酬支払の基礎となった日数が17日未満である月があっても、変更することができます。

 

育児休業等終了時報酬月額変更の作成手順

 

それでは、育児休業等終了時報酬月額変更届を一緒に作成していきましょう。

今回は、「株式会社 海洋メカニカル」の労働者である「蛸中墨子(たこなかすみこ)」さんをモデルに進めていきます。

 

 

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提出者記入欄および社会保険労務士記載欄

①欄外上の日にちを記入するところには、育児休業等終了時報酬月額変更届を提出する日を記入します。育児休業の終了日の翌日から起算して2月を経過した日の属する月の翌日以後となります。

②事業所整理番号は、【群市区】の数字と、【記号】の文字を記入します。

事業所整理記号
「数字2桁のカタカナまたは英数4桁以内」や「漢字+ひらがな」など、自治体ごとに異なる形式で表されます。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合は、事業所整理記号は健康保険証に記載された「記号」と変換可能 です。たとえば、「渋2いろは」という厚生年金保険の事業所整理記号は、全国健康保険協会(協会けんぽ)では「64010203」という数字になります。

③提出者の情報は、事業所所在地、事業所名称、事業主氏名、電話番号を漏れなく記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。

④社会保険労務士記載欄は、本届出などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。

 

申出者欄

まずは、育児休業等を修了した際の標準報酬月額の改定について申し出ることを示すために、欄左上のチェックボックスに✓を記入します。

②欄内右の日にちを記入するところには、申し出る日を記入します。

③申出者の情報は、住所、氏名、電話番号を記入します。申出者の印鑑も押します。

 

被保険者欄A

①被保険者整理番号は、そのまま記入します。

被保険者整理番号
社会保険に加入したときに、会社内で1番から順に従業員に割り当てる番号です。新入社員など、新しく健康保険証を発行する場合は、直前に社会保険に加入した従業員の次の番号を採番します。従業員に被扶養者がいる場合は、従業員と同じ番号を割り当てます。

②個人番号は、マイナンバーカードに記載されている12桁の番号を記入します。記入する際は必ず本人確認を行ってください。マイナンバーカードに記載されている個人番号がわからないもしくは、記入することを希望しない場合は、年金手帳などに記載されている10桁の基礎年金番号を記入することもできます。

③被保険者氏名は、氏と名を分け、フリガナも記入します。

④被保険者の生年月日は、元号を「5:昭和、7平成、9:令和」のいずれかの番号に〇を付け、年月日を続けて記入します。

⑤子の氏名は、氏と名を分け、フリガナも記入します。

⑥子の生年月日は、そのまま記入します。蛸中墨雄くんは令和3年5月25日に生まれたため、ここでは「0⃣3⃣0⃣5⃣2⃣5⃣」と記入します。

⑦育児休業等終了年月日は、そのまま記入します。

 

被保険者欄B

①支給月は、産前産後休業の終了日の翌日が属する月以後の3月間の月を記入します。蛸中墨子さんは令和4年5月24日に産前産後休業が終了するため、ここでは「5月、6月、7月」と記入します。

②給与計算の基礎日数は、月給者は暦日、日給者や時給者は出勤日数を記入します。蛸中墨子さんは日給者であり、「5月は5日、6月は21日、7月は20日」出勤しました。

③通貨④現物は、いずれもそのまま記入します。

⑤合計は、③と④の合計額を記入します。

⑥総計は、⑤の合計額を記入します。ただし、支給月の賃金支払基礎日数(②の給与計算の基礎日数)が17日未満のときは、その月を除きます。蛸中墨子さんは5月が5日しか出勤していないため、5月を除いた「6月分と7月分の合計額」を記入します。

⑦平均額は、⑥を支給月(賃金支払基礎日数が17日未満の月を減じる)で除した額を記入します。

*修正平均額は、①の支給月に繰り越し分の賃金など、労働の対償ではない金銭があった場合に記入します。詳しくは後述します。

 

被保険者欄C

①従前標準報酬月額は、健康保険および厚生年金保険のそれぞれの従前の標準報酬月額を記入します。

②昇給・降給は、その月数を記入し、「1:昇給、2:降給」のいずれかの番号に〇を付けます。

③遡及支払額は、育児休業の終了日の翌日が属する月以後の3月間の月において、繰り越し分の賃金などの労働の対償ではない金銭があった場合に記入します。この金額を前述の「総計」から減じ、「支給月」で乗じた額が「修正平均額」となります。

④改定年月は、育児休業の終了日の翌日から起算して2月を経過した日の属する月の翌日が属する月(前述の「支給月」の最後の月の翌月)となります。蛸中墨子さんは令和4年5月24日に産前産後休業を修了したため、5月、6月、7月の賃金を基に、「8月」から改定されます。

⑤給与締切日・支払日は、締切日はその日にちを、支払日はその日にちと、「当月・翌月」のいずれかに〇を付けます。

⑥備考は、「1:70歳以上被用者、2:二以上勤務被保険者、3:短時間労働者、4:パート、5:その他」のいずれかの番号に〇を付けます。

⑦月変該当の確認は、育児休業を修了した日の翌日に引き続いて産前産後休業などを開始しているかの確認になります。育児休業を修了した日の翌日に引き続いて産前産後休業などを開始している場合には、本届出は提出できません。本届出は提出する場合には、必ずチェックボックスに✓を記入します。

井上とまと

チェックボックスに回答し、育児休業を修了した日の翌日に引き続いて産前産後休業などを開始していないことを表明しなければなりません。

 


 

以上で、育児休業等終了時報酬月額変更届の作成が終わりました。

育児休業終了時の改定については、次の点で随時改定とは異なります。

  • 育児休業の終了日の翌日が属する月以後の3月間に受けた報酬総額には、賃金支払基礎日数が17日未満の月の報酬は参入しない(賃金支払基礎日数が17日未満の月があっても改定できる)。
  • 標準報酬月額に著しい高低(2等級以上の変動)が生じている必要はない(ごくわずかな賃金の高低でも改定できる)。
  • 固定賃金の変動を伴う必要はない(残業手当の減少だけでも改定できる)。
  • 改定の理由は問われない。

 

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