健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届・70歳以上被用者算定基礎届

 

 

健康保険および厚生年金保険の被保険者の標準報酬月額の定時決定をするときに作成する書類が、「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届・70歳以上被用者算定基礎届(以下、被保険者報酬月額算定基礎届)」です。

被保険者報酬月額算定基礎届は、毎年7月1日時点に使用する被保険者を対象とし、事業主が同月10日までに日本年金機構に提出しなければなりません。

健康保険や厚生年金保険では、保険料を徴収したり、一定の保険給付を行う場合は、被保険者が受ける報酬を基礎としてその額を算定します。しかし、実際に個々の被保険者が受ける報酬は、年齢などによって異なり、その形態も月給や時給などまちまちで、その額も毎月変動するものであるため、それぞれの報酬を保険料などの算定基礎とすることは困難です。そこで、現実に支給される報酬とは別に、いくつかの等級に区分した仮定的な報酬(標準報酬月額)に、被保険者の報酬月額を当てはめています。

健康保険は1~50等級、厚生年金保険は1~32級まで定められています。また、1等級間の報酬月額も、健康保険と厚生年金保険で異なります。

標準報酬月額表はこちら

標準報酬月額は、次のいずれかの時点で算定します。

  • 定時決定:毎年7月1日~10日まで
  • 資格取得時決定:被保険者の資格を取得したとき
  • 随時改定:報酬月が大きく増減したとき
  • 育児休業等終了時改定:育児休業や介護休業が終了したとき
  • 産前産後休業終了時改定:産前産後休業が終了したとき
井上とまと

被保険者報酬月額算定基礎届は、上記のうちの定時決定の際に、被保険者の報酬月額から標準報酬月額を決定するための届出です。

定時決定における標準報酬月額は、7月1日前の3月間(4月、5月6月)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として決定します。

井上とまと

ただし、4月、5月、6月のうち、報酬支払の基礎となった日数が17日未満である月があるときは、その月の報酬および除数となる月数から除きます。

 

被保険者報酬月額算定基礎届の作成手順

 

それでは、被保険者報酬月額算定基礎届を一緒に作成していきましょう。

今回は、「株式会社 海洋メカニカル」の労働者である「鮭下洋(さけしたひろし)」さんと「鱒田潮助(ますたしおすけ)」をモデルに進めていきます。

 

 

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提出者記入欄および社会保険労務士記載欄

①欄外上の日にちを記入するところには、被保険者報酬月額算定基礎届を提出する日を記入します。7月1日~10日までのいずれかの日となります。

②事業所整理番号は、【群市区】の数字と、【記号】の文字を記入します。

事業所整理記号
「数字2桁のカタカナまたは英数4桁以内」や「漢字+ひらがな」など、自治体ごとに異なる形式で表されます。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合は、事業所整理記号は健康保険証に記載された「記号」と変換可能 です。たとえば、「渋2いろは」という厚生年金保険の事業所整理記号は、全国健康保険協会(協会けんぽ)では「64010203」という数字になります。

③提出者の情報は、事業所所在地、事業所名称、事業主氏名、電話番号を漏れなく記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。

④社会保険労務士記載欄は、本届出などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。

 

被保険者①の情報A

①被保険者整理番号は、そのまま記入します。

被保険者整理番号
社会保険に加入したときに、会社内で1番から順に従業員に割り当てる番号です。新入社員など、新しく健康保険証を発行する場合は、直前に社会保険に加入した従業員の次の番号を採番します。従業員に被扶養者がいる場合は、従業員と同じ番号を割り当てます。

②氏名は、被保険者の氏名を記入します。

③生年月日は、被保険者の生年月日を記入します。元号は「3:大正、5:明治、7:平成、9:令和」のいずれかの番号を記入し、-ハイフンの後に年月日を記入します。鮭下洋さんは平成元年11月11日生まれですから、ここでは「7-01111」と記入します。

④適用年月は、本届出における情報や報酬月額が適用される年月を記入します。

定時改定の適用年月
定時改定の規定によって決定された標準報酬月額は、当年9月~翌年8月までの各月に適用されます。ただし、6月1日~7月1日までの間に被保険者の資格を取得した者、7月~9月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定する・する予定の者は、定時改定を行いません。

⑤従前の健康保険の標準報酬月額⑥従前の厚生年金保険の標準報酬月額は、いずれも従前(定時改定前)の情報を記入します。

⑦従前改定月は、今回の定時改定前の改定月を記入します。

井上とまと

前回の定時改定の後に、随時改定などが行われなかった場合には、前年の9月と記入します。一方、前回の定時改定の後に、随時改定などが行われた場合には、その随時改定月を記入します。

⑧昇給・減給は、昇給および減給が発生する・した月を記入し、「1:昇給、2:減給」のいずれかの番号に〇を付けます。

 

 

被保険者①の情報B

*定時改定の場合、給与支給月は、4月、5月、6月で固定されています。

①給与計算の基礎日数は、そのまま記入します。

井上とまと

月給者の場合は当月の暦日となることが多く、日給者や時給者の場合は勤務日数となります。また月給者の場合でも、就業規則などにより欠勤日を給与計算の基礎日数から引く場合もあります。

②報酬月額【通貨によるものの額】③報酬月額【現物によるものの額】④報酬月額【合計】は、いずれもそのまま記入します。報酬月額は、社会保険料などを控除する前(源泉徴収前)の額を記入します。現物によるものがある場合には、備考欄の「9:その他」にその内容を記入します。

⑤総計は、各月の④の額の合計を記入します。

⑥平均額は、⑤の額を3で除した額を記入します。1円未満は切り捨てます。

⑦備考は、「1:70歳以上被用者算定、2:二以上勤務、3月額変更予定、4:中途入社、5:病休・育休・休職等、6:短時間労働者、7:パート、8年間平均、9:その他」のいずれか該当するものすべてに〇を付けます。

備考欄の区分
1:70歳以上被用者算定:70歳以上被用者に該当する場合に〇を付けます。厚生年金保険において70歳以上労働者は(当然)被保険者とはなりませんが、一定の要件を満たすことで70歳以上被用者として被保険者の資格を継続させることができます。その際に、当届出を「70歳以上被用者算定基礎届」として、報酬月額を知らせます。70歳に到達したことで、算定基礎月が異なる場合のみ、70歳以上被用者分の算定基礎月を(括弧)に記入します。
2:二以上勤務:被保険者が2か所以上の適用事業所で勤務している場合に〇を付けます。同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者の報酬月額は、各事業所の報酬を合算した額を報酬月額とします。
3:月額変更予定:定時改定から間もなく、報酬月額が変更となる場合に〇を付けます。
4:中途入社:給与の支払い対象となる期間の途中から資格取得したことにより、1か月分の給与が支給されない場合に〇を付けます。また、「9:その他」に入社年月日も記入します。1か月分の給与が支給されない月(途中入社月)を除いた月が算定の対象となります。
5:病休・育休・休職等:該当する場合に〇を付けます。また、「9:その他」にその期間も記入します。病休・育休・休職などの期間は、その月を除いた月が算定の対象となります。
6・7:短時間労働者・パート:該当する場合に〇を付けます。本来であれば、4月、5月、6月のうち、報酬支払の基礎となった日数が17日未満である月があるときは、その月の報酬および除数となる月数から除きますが、4分の3基準を満たさない短時間労働者・パートは、報酬支払の基礎となった日数が「11日未満」である月があるときは、その月の報酬および除数となる月数から除きます。
8:年間平均:いわゆる年俸制などの給与形態の者が該当します。

 

被保険者②の情報A

①個人番号は、マイナンバーカードに記載されている12桁の番号を記入します。記入する際は、必ず本人確認を行ってください。70歳以上の被用者のみ記入します。

②遡及支払額は、遅配分の給与や昇給が遡ったときに、対象月内の通常の給与以外の(遅れて支払われた)報酬がある場合に、その支払われた月と額を記入します。

 

被保険者②の情報B

①給与計算の基礎日数は、そのまま記入します。鱒田潮助さんは70歳以上の被用者で日給者であるため、ここでは「各月の勤務日」を記入します。

井上とまと

5月の勤務日数は13日で、基礎日数が17日未満でした。

②総計は、報酬月額【合計】の合計額を記入します。ただし、鱒田潮助さんの場合は、5月ぶんが除外されるため、「4月分と6月分を合計した額」を記入します。

③平均額は、②を②の対象となった月数で除した額となります。1円未満は切り捨てます。

④修正平均額は、②から前述の「遡及支払額」を減じた額を2で除した額となります。

井上とまと

修正平均額は、遡及支払額がない場合には記入しません。

 


 

以上で、被保険者報酬月額算定基礎届の作成が終わりました。

被保険者報酬月額算定基礎届は、7月1日時点で使用しているすべての被保険者が対象となるため、労働者が多い事業所では膨大な数の情報を記入しなければなりません。

労働者が多い場合は、電子申請を利用するといいでしょう。

 

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