健康保険・国民年金 被扶養者(異動)届(第3号被保険者関係届)
健康保険および国民年金の被保険者が被扶養者を有するときまたは有するに至ったときに作成する書類が、「健康保険・国民年金 被扶養者(異動)届(第3号被保険者関係届)(以下、被扶養者(異動)届)」です。
被扶養者(異動)届は、被保険者が被扶養者を有するときまたは有するに至ったときに、5日以内に厚生労働大臣(日本年金機構)または健康保険組合に提出しなければなりません。また、被扶養者(異動)届は、事業主を経由して被保険者が提出しなければなりません。
事業主は、被保険者が正しく本届出を提出できるように支援しなければなりません。
健康保険法において、「一定の要件」を満たす被保険者の配偶者や親族は被扶養者となり、保険料を支払わなくても保険給付を受けることができます。被扶養者(異動)届は、「一定の要件(続柄、生計維持関係、同一世帯関係など)」を満たしているかどうかを明かすものとなります。
健康保険法における被扶養者は、日本国内に住所を有する者であって、次の要件を満たす者です。
- 被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、兄弟姉妹であって、主として被保険者により生計を維持するもの
- 被保険者の3親等内の親族で、被保険者と同一の世帯に属し、主として被保険者により生計を維持するもの
- 被保険者の事実婚の配偶者の父母および子であって、被保険者と同一の世帯に属し、主として被保険者により生計を維持するもの
- 被保険者の事実婚の配偶者の死亡後における父母および子であって、被保険者と同一の世帯に属し、主として被保険者により生計を維持するもの
直系尊属 本人の父母、祖父母、曾祖父母のように、本人の前の世代で、直通する系統の親族のことです。 |
生計維持関係の認定基準(所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族)は、次の通りです。
被保険者と同一の世帯であるか | 認定対象者の年間収入 |
同一の世帯に属している | 130万円未満(60歳以上の者または障害者は180万円未満) 被保険者の年間収入の2分の1未満 |
同一の世帯に属していない | 130万円未満(60歳以上の者または障害者は180万円未満) 被保険者からの援助(仕送りなど)による収入額より少ない |
同一の世帯とは、被保険者と住居および家計を共同する者のことで、同一の戸籍内にあるかは問われません。また、被保険者が世帯主である必要もありません。
被扶養者(異動)届の作成手順
それでは、被扶養者(異動)届を一緒に作成していきましょう。
今回は、「株式会社 海洋メカニカル」の労働者「鮭下洋(さけしたひろし)」さんの妻である「鮭下泡実(さけしたあわみ)」さんをモデルに進めていきます。
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事業主記入欄
①欄外上の日にちを記入するところには、被扶養者(異動)届を提出する日を記入します。
②事業所整理番号は、【群市区】の数字と、【記号】の文字を記入します。
事業所整理記号 「数字2桁のカタカナまたは英数4桁以内」や「漢字+ひらがな」など、自治体ごとに異なる形式で表されます。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合は、事業所整理記号は健康保険証に記載された「記号」と変換可能 です。たとえば、「渋2いろは」という厚生年金保険の事業所整理記号は、全国健康保険協会(協会けんぽ)では「64010203」という数字になります。 |
③事業主の情報は、(郵便番号および)事業所所在地、事業所名称、事業主氏名、電話番号を漏れなく記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。
当該欄を事業主自ら署名した場合には押印は不要です。
社会保険労務士記載欄および届出の基本情報
①社会保険労務士記載欄は、本届出などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。
②事業主確認欄は、扶養認定を受ける者が所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族であることを事業主が確認した場合は、「確認」に〇を付けます。〇が付いた場合には、「課税(非課税)証明書」などの、扶養認定を受ける者の収入金額が確認できる書類の添付は不要です。
③事業主等受付年月日は、事業主が被保険者を通じて、配偶者から届書を受け取った日を記入します。
被保険者欄
①被保険者整理番号は、そのまま記入します。
被保険者整理番号 社会保険に加入したときに、会社内で1番から順に従業員に割り当てる番号です。新入社員など、新しく健康保険証を発行する場合は、直前に社会保険に加入した従業員の次の番号を採番します。従業員に被扶養者がいる場合は、従業員と同じ番号を割り当てます。 |
②氏名、③生年月日は、そのまま記入します。
④性別は、「1:男、2:女」のいずれかの番号に〇を付けます。
⑤個人番号は、マイナンバーカードに記載されている12桁の番号を記入します。記入する際は必ず本人確認を行ってください。マイナンバーカードに記載されている個人番号がわからないもしくは、記入することを希望しない場合は、年金手帳などに記載されている10桁の基礎年金番号を記入することもできます。
基礎年金番号を記入する場合は、左詰めで記入し、下欄の住所などの情報も記入する必要があります。
⑥取得年月日は、被保険者の資格を取得した日を記入します。年号は、「5:昭和、7:平成、9:令和」のいずれかの番号に〇を付け、年月日を後に続けて記入します。
⑦収入は、被保険者の年間収入見込みを記入します。
配偶者である被扶養者欄A
①氏名には、欄上の日にちを記入するところに、被保険者が本届出を事業主へ提出した日を記入します。氏名はそのまま記入し、被扶養者の印鑑も押します。また、本届出の提出を配偶者(被保険者)に委託する場合には、欄下のチェックボックスに✓を入れます。
②生年月日は、そのまま記入します。
③性別は、「1:夫、2:妻、3:夫(未届)、4:妻(未届)」のいずれかの番号に〇を付けます。(未届)は事実婚の場合です。
④個人番号は、マイナンバーカードに記載されている12桁の番号を記入します。記入する際は必ず本人確認を行ってください。マイナンバーカードに記載されている個人番号がわからないもしくは、記入することを希望しない場合は、年金手帳などに記載されている10桁の基礎年金番号を記入することもできます。
*外国国籍および外国人通称名は、被扶養者が外国人の場合に記入します。
⑤住所は、「1:同居、2:別居」のいずれかの番号に〇を付け、その後に住所を記入します。
⑥電話番号は、そのまま記入します。
配偶者である被扶養者欄B
①配偶者が被扶養者になった場合は「該当」に、被扶養者でなくなった場合は「非該当」に、被扶養者の情報を変更する場合は「変更」に〇を付けます。今回は、配偶者が被扶養者になったときの届出であるため、「該当」に〇を付けます。
②被扶養者は、③の理由が「1:配偶者の就職」である場合は被保険者の取得年月日と同じ日を、「2:婚姻」である場合は婚姻した日を、「3:離職」である場合は離職した日の翌日を、「4:収入減少」である場合は収入が減少した日を記入します。
③理由は、「1:配偶者の就職、2:婚姻、3:離職、4:収入減少、5:その他」のいずれかの番号に〇を付けます。この理由によって、前記の②の日にちが異なります。
④職業は、「1:無職、2:パート、3:年金受給者、4:その他」のいずれかの番号に〇を付けます。当然のことながら、正社員などの被扶養者となりにくい職業は含まれません。
⑤収入は、そのまま記入します。前述の生計維持関係の認定基準に該当しているかに注意します。
⑥備考は、特記事項があれば記入します。また、戸籍謄本などで被保険者と被扶養者の続柄を事業主が確認している場合には、「*続柄確認済み▢」のチェックボックスに✓を入れます。
被保険者および被扶養者の双方のマイナンバーを記入していて、かつ「*続柄確認済み▢」のチェックボックスに✓が入っている場合には、続柄の確認に関する添付書類を省略することができます。
*その他の欄は、被扶養者でなくなった場合、被扶養者の情報を変更する場合、海外特例要件に該当する場合に記入します。
その他の被扶養者欄および欄外下
①被扶養者でない配偶者を有するときは、配偶者の年間収入見込みを記入します。
②その他の被扶養者欄には、配偶者以外の被扶養者の情報を記入します。記入方法は「配偶者である被扶養者欄」を参考にしてください。
③その他の被扶養者欄における備考欄には、仕送り額などを記入します。
④欄外下の申立書は、その他の被扶養者において、被保険者が数回にわたって仕送りする場合に、その額と回数を記入し、被保険者の署名と押印をします。
以上で、被扶養者(異動)届の作成が終わりました。
被保険者が被扶養者を有するときまたは有するに至ったときは、次のようなときです。
- 配偶者のいる被保険者が、社会保険の適用事業所に雇用されたとき
- 社会保険の適用事業所に雇用されている被保険者が、配偶者を有したとき
- 社会保険の適用事業所に雇用されている被保険者の配偶者が、社会保険の適用事業所を退職したとき
- 社会保険の適用事業所に雇用されている被保険者の配偶者が、一定の額以下に収入が減少したとき
上記のような場合には、速やかに被扶養者(異動)届を提出してください。提出が遅れると、最悪の場合、被扶養者が健康保険の保険給付を受けられなくなる場合があります。
健康保険の保険給付を受けられなくなると、病気や怪我をして医療機関にかかったときに、窓口負担が3割ではなく、全額になる可能性があります。