定期健康診断結果報告書
定期健康診断を実施した後に作成する書類が、「定期健康診断結果報告書」です。
健康診断には、一般健康診断、特殊健康診断、その他の健康診断の3つの種類があり、次のようにさらに細分化することができます。
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、歯科医師による健康診断を行ったときは、遅滞なく定期健康診断結果報告書を行政官庁に提出しなければなりません。
一般健康診断(定期健康診断)を実施すべき「常時使用する短時間労働者」は、次の要件を満たすものとなります。
- 期間の定めのない労働契約により使用される者
- 有期労働契約により使用されるものであって、規約期間が1年以上である者または1年以上使用されている者
- 1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
定期健康診断は、常時使用する労働者に対し、次のような検査項目を1年以内ごとに1回実施しなければなりません。
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
- 胸部エックス線検査および喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
身長は20歳以上の者、腹囲・胸部エックス線検査・貧血検査・肝機能検査・血中脂質検査・血糖検査・心電図検査は40歳未満の者は、それぞれ省略することができます。
定期健康診断報告書の作成手順
それでは、定期健康診断報告書を一緒に作成していきましょう。
今回は、「ウミネコ建設 株式会社」の産業医である「雀沢鳴子(すずめさわなるこ)」さんをモデルに進めていきます。
事務所やデスク周りに必要なものは楽天市場 でお得にそろえましょう!
基本情報
①労働保険番号は、事業所に振り出されている事業所番号を記入します。
労働保険番号 事業所が労働保険に加入したときに、労働基準監督署から振り出されるものです。番号は保険関係成立届で確認できますが、インターネット検索などでは確認できません。 |
労働保険番号は、多くの労働保険関連の手続きで必要になります。
②対象年は、定期健康診断を実施した年月を記入します。▢▢▢の左の▢には「7:平成、9:令和」のいずれかの番号を記入し、中・右の▢には年数を記入します。また、▢▢▢の右隣の(括弧)には実施期間を記入し、最後の(括弧)には何回目の報告かを記入します。今回は令和3年4月~9月の期間に実施した1回目の報告であるため、ここでは「9⃣▢3⃣(4月~9月分)(報告1回目)」と記入します。
実施期間が1か月以内程度の一定期間に限られる場合は、「( 月~ 月分)」は未記入で構いませんが、実施期間が数か月にわたる場合は、その期間を記入します。
③検診年月日は、定期健康診断を実施した年月日を記入します。健康診断を1日でまとめて実施する場合はその日を、2日以上にわたって実施する場合は最後の1人が実施した日を記入します。記入のルールは②対象年と同じです。
事業の情報
①事業場の種類は、労災保険率適用事業細目表に記されている「事業の種類」の中から、その事業所に該当するものを選んで記入します。ウミネコ建設 株式会社では道路の工事を生業としています。そのため、事業の種類は「道路新設工事」と記入します。
②事業場の名称、③事業場の所在地は、いずれもそのまま記入します。
定期健康診断の概要
①健康診断実施機関の名称、②健康診断実施機関の所在地は、いずれもそのまま記入します。
実施期間が複数ある場合は、そのすべてを記入します。
③在籍労働者数は、常時使用労働者以外の労働者も含めたすべての労働者の数を記入します。
④受診労働者数は、定期健康診断の対象となり得る常時使用労働者のうち、定期健康診断を実施した労働者数を記入します。
定期健康診断は、基本的にすべての労働者が対象となりますが、常時使用労働者以外の労働者や、他の健康診断を実施してから1年以内の者については除外することができます。
⑤労働安全衛生規則第13条第1項第2号揚げる特定業務に従事する労働者は、次のような14業務にあたる労働者の数を記入し、その合計数も記入します。
- 多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務
- 多量の低温物体を取り扱う業務および著しく寒冷な場所における業務
- ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線に曝される業務
- 土石、獣毛などのじんあいまたは粉末を著しく飛散する場所における業務
- 異常気圧化における業務
- 削岩機、鋲打機などの使用によって身体に著しい振動を与える業務
- 重量物の取り扱いなどの重激な業務
- ボイラー製造などの強烈な騒音を発する場所における業務
- 坑内における業務
- 深夜業を含む業務
- 水銀、ヒ素、黄リン、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
- 鉛、水銀、クロム、ヒ素、黄リン、フッ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二酸化炭素、青酸、ベンゼン、アリニンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務
- 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
- その他厚生労働大臣が定める業務
健康診断項目
①実施者数は、各々の項目を実施した労働者の数を記入します。
②有所見者数は、各々の項目で異常な所見があった労働者の数を記入します。
健康診断の補足と産業医
①所見のあった者の人数は、何らかの異常な所見があった労働者の数を記入します。前述の「有所見者数」の合計数を記入するわけではありません。
1人の労働者に、複数の項目で有所見が見つかる場合もありますから、たいていの場合は「所見のあった者の人数」の方が「有所見者数」の合計数よりも小さくなります。「所見のあった者の人数」と「有所見者数」が同じことはあり得ますが、「所見のあった者の人数」の方が大きくなることはありません。
②医師の指示人数は、再検査や精密検査などの医師の指示があった労働者の数を記入します。
③歯科検診は、労働安全衛生規則第48条による歯科検診を実施した場合に、健康診断項目同様に「実施者数」と「有所見者数」を報告します。
④産業医は、「産業医の氏名」と「所属医療機関の名称及び所在地」をそのまま記入します。
欄外下
①欄外下の日にちを記入するところには、定期健康診断結果報告書を提出する日を記入します。
②左端の「___労働基準監督署長 殿」には、事業場がある地域を管轄する労働基準監督署長の名称を記入します。「ウミネコ建設 株式会社」は、大阪府堺市中区にありますから、ここでは「堺」と記入します。
③事業者職氏名には、事業者の事業所の名称、事業主の職名、事業主の氏名を記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。
以上で、定期健康診断結果報告書の作成が終わりました。
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断の実施後に、定期健康診断結果報告書を行政官庁に提出しなければなりません。一方、特殊健康診断を実施した場合には、事業規模に関わらず報告しなければなりません。