事故報告書
事業場で事故が発生したときに作成する書類が、「事故報告書」です。
事故報告書に似たようなものに、「労働者死傷病報告」というものもありますが、こちらは別の記事で確認してください。
事故報告書と労働者死傷病報告の大きな違いは、事故報告書は労働者に死傷者が出なくても、労働安全衛生規則第96条に定める事故が発生した場合に提出しなければならず、労働者死傷病報告は労働者に死傷者が発生した場合に提出しなければならないという点にあります。
事故報告書だけを提出することはありますが、労働者死傷病報告だけを提出することはありません。労働者死傷病報告を提出するときは、事故報告書も併せて提出します。
労働安全衛生規則第96条に定める事故とは、次のような事故のことです。
- 火災
- 爆発
- 建設物の崩壊
- ボイラーの破裂
- つり上げ荷重が0.5トン以上のクレーンの倒壊
- ワイヤーロープの切断 など
以上のような事故が発生したときには、事故報告書を遅滞なく所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。
事故報告書の作成手順
それでは、事故報告書を一緒に作成していきましょう。
今回は、「ウミネコ建設 株式会社」の現場代表である「雉羽根朗(きじはねろう)」さんの報告をモデルに進めていきます。
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事業の情報
①事業の種類は、労災保険率適用事業細目表に記されている「事業の種類」の中から、その事業所に該当するものを選んで記入します。ウミネコ建設 株式会社では道路の工事を生業としています。そのため、事業の種類は「道路新設工事」と記入します。
②事業場の名称は、その事業場の名前を記入しますが、建設業にあっては工事名も併記します。ここでは「ウミネコ建設 株式会社 県道200号線道路新設工事」と記入します。
③労働者数は、その事業場に関わるすべての労働者を記入します。
共同企業体や関係請負人を使用する事業の場合は、下請けや請負人を含めた労働者数を記入します。
事故の概要
①事業場の所在地は、そのまま記入します。仕事を行う場所が、複数の地域にまたがるときは仕事の開始地点などを記入しましょう。
②発生場所は、事故の発生場所を記入します。住所を記入することが難しい場合でも、できるだけ場所を特定できるように記入します。
③発生日時は、労働災害が発生した日を記入します。
④事故を発生した機械等の種類等は、事故の起因となった機械などがある場合に、その種類や名称を記入します。今回は、掘削ドリルが事故の起因の1つとなったため、「掘削ドリル」と記入します。
⑤構内下請け事業場の場合は親事業場の名称(建設業の場合は元方事業場の名称)は、親事業場もしくは元方事業場の名称を記入します。ここでは「ウミネコ建設 株式会社」と記入します。
事業の詳細
①事故の種類は、労働安全衛生規則第96条に定める事故から記入します。ここでは「建設物の倒壊」と記入します。
②事故発生事業場の被災労働者数【死亡】は、死亡した労働者の数を記入します。
③事故発生事業場の被災労働者数【休業4日以上】は、被災労働者のうち、4日以上休業した労働者の数を記入します。
④事故発生事業場の被災労働者数【休業1~3日】は、被災労働者のうち、4日未満の休業をした労働者の数を記入します。
⑤事故発生事業場の被災労働者数【不休】は、被災労働者のうち、休業しなかった労働者の数を記入します。
②~⑤はいずれも男女で分けて記入します。また、それらの合計も記入します。
⑥その他の被災者の概要は、事故発生事業場以外の被災労働者の概要を記入します。
たとえば、ガラスの下敷きになった被災労働者を救護していた人が、救護所で被災者から落ちたガラスが刺さった場合などに記入します。
⑦物的損害は、その内容(名称・規模等)と被害金額を記入します。
事故の分析
①事故の発生状況は、事故の場所、事故の規模、被災労働者の負傷の程度などを記入します。
②事故の原因は、原因が明らかな場合は明確に、明らかでないときは調査中であることを添えておおよその起因を記入します。
③事故の防止対策は、すでに確立したものがあれば明確に、まだ確立したものがない場合は検討中であることを添えておおよその対策を記入します。
④参考事項は、①~③において追記すべきことがあれば記入します。
⑤報告書作成者職氏名は、報告書作成者が所属する事業所の名称、職名、氏名を記入します。
欄外下
①欄外下の日にちを記入するところには、事故報告書を提出する日を記入します。
②左端の「___労働基準監督署長 殿」には、事業場がある地域を管轄する労働基準監督署長の名称を記入します。「ウミネコ建設 株式会社」は、大阪府堺市中区にありますから、ここでは「堺」と記入します。
③事業者職氏名には、事業者の事業所の名称、事業主の職名、事業主の氏名を記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。
以上で、事故報告書の作成が終わりました。
事故報告書は、労働安全衛生規則第96条に定める事故が発生したときに作成しなければならない書類ですが、労働安全衛生規則第96条に定める事故以外の場合には作成しなくてもいいというわけではありません。
労働安全衛生規則第96条に定める事故以外の些細な事故であっても、被災労働者とのトラブルを避けるため、事故報告書を作成し、労働基準監督署に報告しておくこともリスク管理として大切です。