1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届
1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用するときに作成する書類が、「1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届」です。
1週間単位の非定型的変形労働時間制は、常時使用する労働者の数が30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店の事業で採用することができます。
これらの事業は、日ごとの業務に著しい閑散が生じ、かつその閑散が定型的に定まっていないことが常です。そのため、1週間を単位に労働時間を特定しないことで、効率的な時間配分を可能とし、全体として労働時間を短縮することができるようになります。
1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用することにより、1週間に40時間以内の範囲で、1日に10時間まで労働させることができるようになります。
1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届の作成手順
それでは、1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届を一緒に作成していきましょう。
今回は、「株式会社 浜崎旅館」の代表取締役である「海岡磯次(うみおかいそじ)」さんと、労働者の代表である波田瑞代(なみたみずよ)」さんをモデルに進めていきます。
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事業の情報
①事業の種類は、労災保険率適用事業細目表に記されている「事業の種類」の中から、その事業所に該当するものを選んで記入します。浜崎旅館は温泉地にある宿泊施設です。そのため、ここでは事業の種類に「宿泊業」と記入します。
②事業の名称は、その事業所の名前を記入します。ここでは「株式会社 浜崎旅館」と記入します。
株式会社 浜崎旅館は「法人」です。そのため、法人格も記入します。
③事業の所在地は、事業所がある場所の住所を記入します。
事業の所在地 店舗、社屋、事務所などを持つ場合は、事業の所在地はその店舗などがある住所を記入します。一方、店舗などを持たずに事業を経営している場合(フリーランスなど)は、自宅などの主たる活動拠点を記入します。 旅館などの宿泊施設の場合、本館と分館など、同じ敷地内で建物が分かれていることもあります。建物は分かれていますが、それぞれ独立しているものとみなされることはなく、本館と分館を合わせて一の事業とみなされます。一方、一号館から少し離れたところに二号館があり、それぞれに受け付けやフロントなどの事務所があり、経営的に分離している場合は、それぞれ独立したものとみなされます。 |
労使協定はそれぞれの事業所ごとに締結し、届出を提出しなければなりません。
④常時使用する労働者数は、1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定を締結した時点での常時使用する労働者の数を記入します。浜崎旅館では常時「20人」の労働者を使用しています。
協定の内容
①業務の種類は、1週間単位の非定型的変形労働時間制の対象となる業務を記入します。浜崎旅館では「調理、給仕、応接などにかかわるすべての業務」を対象としています。
②該当労働者数は、上記の「業務の種類」を担当する労働者の数を記入します。また、満18歳未満の者は(括弧)内に記入します。男女で人数を分けて記載する必要はありません。浜崎旅館では合計「20人」の労働者が、1週間単位の非定型的変形労働時間制の対象となります。
③1週間の所定労働時間は、1週間に予定されている総労働時間を記入します。1週間単位の非定型的変形労働時間制では、1週間に40時間以上労働させてはならないため、40時間超の時間を記入することはできません。
④変形労働時間制による期間は、その起算日からの期間を記入します。労使協定の有効期間に、法律上の制限はありませんが、1年間程度に設定するところが多いようです。
欄外下A
①協定の成立年月日は、 1週間単位の非定型的変形労働時間制 に係る労使協定が成立した日を記入します。
②代表する者の職名・氏名は、労使協定を締結するときの労働者側の代表者の所属している事業所の名称、代表者の職名および氏名を記入し、代表者の印鑑を押します。
③選出方法は、労働者側の代表者の選出方法を記入します。
労働者側の代表者の選出方法 労働基準法に「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」と規定されています。民主的な手続きが取られていることが大切です。 |
④2つのチェックボックスは、それぞれの事項に該当していたら、□に✓を入れてください。労使協定が正常に締結されていれば、問題なく✓が入ります。
欄外下B
①欄外下の日付を記入するところには、1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届を提出する日を記入します。
②左端の「___労働基準監督署長 殿」には、その事業所の住所がある地域を管轄する労働基準監督署(長)の名称を記入します。浜崎旅館は、群馬県利根郡みなかみ町にありますから、ここでは「沼田」と記入します。
③使用者の情報は、事業所の名称、事業主の職名、事業主の氏名を記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。
以上で、1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届の作成が終わりました。
1週間単位の非定型的変形労働時間制を含む変形労働時間制を採用している事業所に限らず、所定労働時間の設定の事業場においても、「事前」に「一定期間」の労働日(反対に休日も)とその労働時間を定めておかなければなりません。多くの場合、「事前」は1か月前であり、「一定期間」は1か月です。
たとえば、4月(一定期間)の勤務表は、3月中(事前)に完成しておかなければならないということです。
ただし、1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する事業においては、日々の業務量が変わりやすく、1か月前に労働日などを設定することが難しい場合もあるでしょう。
そのため、1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用した場合においては、1週間が開始する前までに労働時間を通知しておけばいいとされています。また、緊急やむを得ない事由がある場合には、前日までに通知することで、あらかじめ通知した労働時間を変更することができます。これにより柔軟に労働時間を変形させ、労使ともに働きやすい条件にすることができるようになります。
ただし、通知は書面により行わなければなりません。