ニューノーマル時代の住まい選び

 

 

新型コロナウイルスの影響により、テレワークが普及したことで、自宅で過ごす時間が長くなるなど、新たなライフスタイル(ニューノーマル)が浸透し、住まいに求められるものも変わりつつあります。社会の変化や価値観の多様化に伴う住まい選びのポイントを考えていきたいと思います。

 

目次

 

 

職住融合

平日はテレワーク、休日はできるだけ外出を避ける――。このようなニューノーマルと言われるライフスタイルは、新型コロナウイルスの大流行により、多くの人にとって身近なものとなりました。そのため、ニューノーマル時代の生活にフィットする住まいを求める人が増えてきています。

働き方改革でも進まなかったテレワーク。皮肉なことに、新型コロナウイルスという大きな災いが、テレワークを進める原動力となりました。自宅で仕事をする「職住融合」の中で、多くの人が住環境を見直しています。テレワーク用スペースや環境の確保から、住み替えやリフォームを検討する人も増えています。

井上とまと

仕事に集中するためには、テレワーク用スペースと生活空間がある程度分離されていた方がいいと思います。

 

郊外や地方の暮らし

郊外や地方への移住に注目が集まっています。都心よりも価格を抑えながら、広い物件に住むことができるということで、もともとファミリー層の間で人気が高まっていましたが、ニューノーマル時代の到来により、さらに人気が過熱しています。このような傾向は、内閣府が発表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動変化に関する調査」においても表われています。

郊外や地方の住まいは、キッチン、ガレージ、庭、趣味のスペースなどにもこだわりを反映しやすく、自宅での生活が長くなる中で、自分の時間を充実させやすくなります。家族がお互いに気配を感じながらも、各々の時間を過ごせるスペースがある間取りも魅力的です。

井上とまと

郊外や地方は、都心に比べて土地が安い傾向にあります。坪単価が都心の10分の1なんてこともざらにあります。そのため、郊外や地方では土地の制限を受けずに、自由な間取りを選択することができるということです。

 

2拠点生活

場所を選ばずに働ける環境が整ったことで、ワークライフバランス(WLB)の充実が図りやすくなり、都心から郊外や地方への移住に関心を持つ人が増えています。実際、2020年は東京からの転出者数が40万1,805人と、前年比で7.4%増えました。移住に関心がある事情は様々ですが、コロナ禍で変化した日常が理由である人が多いようです。

都心と郊外の両方に拠点を構える、いわゆる2拠点生活にも注目が集まっています。定年退職者などの高年齢世代に加え、若い世代からの関心も高くなっていることは、内閣府が発表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動変化に関する調査」においても表れています。都心と郊外の両方を組み合わせながら理想の暮らしを実現する生活スタイルは、今後も人気が高まりそうです。

井上とまと

坪単価の安い郊外で家を構え、週末は郊外の自宅で過ごし、月曜日から木曜日は、都心のアパート、シェアハウス、ビジネスホテルなどの休憩のためだけの仮住まいで生活する人もいます。

 

移動短縮のゆとり

郊外の暮らしが注目される一方、都心は交通網が発達していて、オフィス街や繁華街へのアクセスが良好な点がメリットです。都心のマンションの場合、コロナ禍前から「駅直」や「駅前」の物件に根強い人気があります。移動の時間を短縮して、自由な時間を生み出したいと考えている人が多いようです。職場近くの住まいを選ぶことで公共交通機関による密を避け、自転車や徒歩を主な通勤手段にする人もいます。駅から近い物件は、売却の際も有利で、資産価値が下がりにくい傾向にあります。

防災マニュアルや防災訓練を導入しているなど、災害に備えている物件かどうかもポイントです。コロナ禍で人が密集する通常の防災訓練の開催が難しいため、代わりにオンライン防災訓練を実施しているところもあります。

不動産経済研究所による調査では、都心や湾岸のタワー・大型マンションは堅調を維持すると予想しています。マンションの供給量も2020年は落ち込んだものの、2021年は2019年の比較でも増加に転じる見込みです。

井上とまと

ただし、豪雨災害が発生した際のタワーマンションの脆弱性など、地域によってはまだまだ防災対策に課題が残ります。

 

脱炭素の暮らし

ニューノーマル時代の住まい選びには、住宅性能のチェックも欠かせません。令和の新たな住宅政策の指針として、2021年3月に「住生活基本計画」が閣議決定されました。ニューノーマルな生活や、台風・地震などの災害に対応した家づくりなどを含め、脱炭素社会の実現に向けた目標達成を目指しています。この中で注目を集めているのが、ZEH(Zero Energy House)やLCCM(Life Cycle Carbon Minus)と呼ばれる住宅性能です。

年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指した住宅をZEH住宅と言い、壁や床の断熱性能、冷暖房などの省エネ性能を高めたうえで、太陽光発電などでエネルギーを創出しています。ZEHは戸建てがほとんどでしたが、近年はマンションタイプのZEH-Mも登場しています。さらに、戸建てのZEHには、省エネ性能をさらに高めつつ、再エネなどのさらなる自家消費拡大を図り、需給一体型を目指したZEH+や次世代ZEH+などもあります。

LCCMは建築、住居、廃棄という住宅のライフサイクルの前段階を通して二酸化炭素(CO2)の排出をマイナスにするもので、ZEH以外で脱炭素に貢献します。

井上とまと

ZEHは、エネルギーの消費量を生産量で相殺してゼロエネルギーをものですが、仮に消費量が100で生産量も100のZEHよりも、消費量が30で生産量も30のZEHを選びましょう。太陽光発電などは、経年劣化で生産量が落ちるからです。

 

災害への備え

台風・地震などの自然災害が頻発する中、災害リスクに強い家づくりが求められ、Resilience(外部から受ける力や影響に対する強靭さや回復力)という言葉が注目されています。Resilienceに優れた家の特徴として、平常時に快適に過ごせること、非常時に住居者の命を守る頑丈さがあること、ライフラインが復旧するまでの数日間耐えることができることなどが挙げられます。ZEHもその1つです。

政府は、住宅性能を向上させるリフォームを行うことで、長期にわたり安心して住むことができる良質な住宅ストックの拡充を目指しています。耐震性の補強や断熱性を高める改修、省エネ設備の設置、バリアフリー化などのリフォーム、ZEHへのリノベーションなどに対して、補助金や減税制度といった国や自治体からのサポートが設けられています。

井上とまと

政府の災害対策・復旧費用も、年々膨らんでいますから、財政対策としても良質的な住宅が増えることが望まれます。

 

支援拡充

国による住宅購入支援政策の強化も進んでいます。例えば、住宅ローン減税制度では、契約や入居した時期などによって、控除期間が10年間から13年間になる特例が延長されました。11年目からは住宅ローンの年末残高の1%、もしくは建物価格の2%のいずれか小さい額が控除されます。面積要件の緩和も行われました。

最大100万ポイントが発行される「グリーン住宅ポイント制度」も実施中です。2021年10月末までに契約を結んだ一定の省エネ性能を有する住宅の新築、一定のリフォームや既存住宅の購入額が対象になります。発行されたポイントは、ワークスペースなどの新たなニューノーマルに対応するための追加工事や、省エネ、防災などの様々な政策テーマに該当する商品と交換することができます。

他にも、自宅を新規で取得する場合に、収入に応じた額が最大50万円支払われる「すまい給付金」、父母や祖父母から住宅購入資金を贈与された場合の非課税枠の上限緩和などの政策もあります。

 


 

新型コロナウイルスの感染拡大から1年が経過した現在、脱炭素社会に向けて住まいは日々進化しています。この機会に自分らしい住まいや暮らし方を考えてみてもいいかもしれません。

 

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