【徹底解剖】ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ)
日本の株式市場の代表的な指数は日経平均株価とTOPIXだったよね。
うん。最近だとJPX日経インデックス400とか、TOPIX Core30とかも注目されているけど、歴史・知名度もとに日経平均株価とTOPIXの2つの指数が強いね。
それなら、米国の株式市場にも、日経平均株価とTOPIXに匹敵するような指数はあるのかな?
もちろん! 米国の株式市場を代表する指数は、日本と同じように数多くあるんだけど、その中でも特に重要なのがダウ・ジョーンズ工業株化平均とS&P500指数なんだよ。
S&P500指数は前に教えてもらったよね。ダウ・ジョーンズ工業株価平均ってのは、もしかしてNYダウってやつ?
そのとおり。NY(ニューヨーク)ダウとか、ダウ平均とか訳されたりしている指数だよ。
NYダウって言葉自体は結構聞いたことがあるけど、実際に何を表したものなのかは知らないな……。
じゃー、NYダウについて詳しく話していこうか。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ・ダウ平均) 米国を代表する株価指数の1つです。米国の金融・経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」を発行するダウ・ジョーンズ社が1日1回算出しています。名称に「工業株」が含まれているものの、工業株に限らず公益事業と輸送事業以外は組み入れできるようになっており、ニューヨーク証券取引所やNASDAQ市場に上場している米国の有名な30銘柄を厳選しています。指数の算出は、構成銘柄の株価を合計し、銘柄数で除して単純な平均を出したあと、株価変動要因を調整するための定数(除数)で除す「株価平均型」で行います。 |
株価平均型ってことは、日本でいうと日経平均株価に近い感じかな。
うん。株価平均型の特徴は、株価の高い銘柄の影響を強く受けるということにあったね。
日経平均株価も1銘柄のウエイトが大きかったけど、NYダウも同じような感じになるのか。
日経平均株価は225銘柄の平均だったとけど、NYダウは30銘柄の平均だからね。……どういうことかわかるよね?
そっか。つまり、日経平均株価よりも……。
おっと。その先はこれから詳しく説明していくよ!
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ)を構成する代表的な銘柄
さっきも言いかけてたとおり、NYダウは構成銘柄が30だから、225の日経平均株価よりも1銘柄の影響が大きいんだ。
うん。
しかも、上位銘柄の株価は、日本の銘柄よりも米国の銘柄の方がはるかに大きいわけだから、1銘柄の影響はさらに大きくなる。
構成銘柄のちょっとした変動が、指数を大きく上下させるってことだね。
しかも、NYダウは米国のみならず、世界的な指数といっても過言ではないほど、他の地域・国の指数や経済に影響を及ぼしているんだ。逆に言うと、変動しやすいってことが指数の重要性を高めているのかもしれないね。
構成銘柄は絶対に把握しておかないと。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ)の構成銘柄(2022年5月)
銘柄 | 業種 | ウエイト(%) |
Goldman Sachs:ゴールドマン・サックス | 金融 | 7.83 |
3M:スリーエム | 資本財 | 5.87 |
Boeing:ボーイング | 資本財 | 5.63 |
IBM | テクノロジー | 5.63 |
United Health:ユナイテッドヘルス | ヘルスケア | 5.19 |
Home Depot:ホームデポ | 消費財 | 4.56 |
Apple:アップル | テクノロジー | 4.30 |
McDonald’s:マクドナルド | サービス | 3.99 |
Johnson & Johnson:ジョンソン&ジョンソン | ヘルスケア | 3.84 |
Traveler’s Company:トラベラーズ・カンパニー | 金融 | 3.83 |
United Technologies:ユナイテッドテクノロジーズ | 資本財 | 3.54 |
Chevron:シェブロン | エネルギー | 3.51 |
Disney:ディズニー | サービス | 3.46 |
Caterpillar:キャタピラー | 資本財 | 3.06 |
Procter & Gamble:プロクター&ギャンブル(P&G) | 消費財 | 2.85 |
JP Morgan Chase:JPモルガン・チェース | 金融 | 2.84 |
Visa:ビザ | サービス | 2.76 |
Wxxon Mobil:エクソン・モービル | エネルギー | 2.56 |
American Express: アメリカン・エキスプレス | 金融 | 2.52 |
E.I. du Pont de Nemours:イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール | 素材 | 2.49 |
Wal-Mart Inc.:ウォールマート・ストアーズ | 消費財 | 2.25 |
Merck:メルク | ヘルスケア | 2.07 |
Microsoft:マイクロソフト | テクノロジー | 2.02 |
Nike:ナイキ | 消費財 | 1.81 |
Verizon Communications:ベライゾン・コミュニケーションズ | 電気通信 | 1.57 |
Coca-Cola:コカ・コーラ | 消費財 | 1.31 |
Intelインテル | テクノロジー | 1.15 |
Pfizer:ファイザー | ヘルスケア | 1.08 |
Cisco Systems:シスコシテムズ | テクノロジー | 1.08 |
General Electric:ゼネラル・エレクトリック | 消費財 | 0.94 |
業種別の構成銘柄数
業種別のウエイト
上位10銘柄で全体の50%以上のウエイトか。
予想どおり、日経平均株価よりも1銘柄の影響が大きいと言えるね。
でも、業種別のバランスは取れている感じだね。
公共事業と運輸事業は除かれているけど、構成銘柄の業種はバランスがとれているんだ。この点もNYダウが重宝されている所以だね。
最初、30銘柄の株価の平均だって聞いたときは、偏りがある指数なのかなって思ってたけど、米国の株式市場を表した指数だっていうのも頷けるな。
世界で最も有名な指数は伊達じゃないね。次は、その変動(チャート)を見ていこう。
チャート分析
2020年:新型コロナウイルスが世界を支配した年
- 2月:新型コロナウイルス(COVID-19・武漢肺炎)の流行により急落
- 3月:ニューヨークのロックダウンの影響により底をつく(18591.93米ドル)
- 5月:ロックダウン解除による株式の買戻し
- 9月:両党が拮抗の大統領選による先行きの不透明感から下落
- 11月:大統領選の終結とワクチンの実用化への期待により上昇
- 12月:金融緩和も継続されて終値は年初を超える(30199.31米ドル)
変動しやすい指数のって話だったけど、1日に1,000ドル近く変動することもあるんだね。
NYダウのチャートの面白い(怖い)ところだね。
チャート的には、V字回復と言えるかたちになっているね。
2月に急激に下落。3月に底。大規模な金融緩和により6月まで上昇。ここまでは両国でほとんど同じだね。米国はこの後にワクチン接種の実用化が見え始めたから、9月までは日本よりも堅調に展開したんだ。
バイデンさんとトランプさんの激闘は記憶に新しいけど、経済は停滞していた感じなんだね。
米国の大統領は日本の内閣総理大臣よりも強い権限を持っているから、誰が・どの党の候補者が大統領になるかで、その後の政策や国の在り方が大きく変わるんだ。それは2016年にトランプさんが大統領になったときに実感したよね。
2021年:コロナ・ショック後の歴史的な株高を経験した年
- 1月:連邦議会議事堂の襲撃・占領とバイデン新大統領就任
- 6月:国民の70%がワクチン接種完了
- 8月:算出開始から初の35,000米ドルに到達
- 8月:新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)の影響でやや停滞
- 10月:中国の大手不動産会社のデフォルト危機や原油価格の高騰に伴う下落
- 11月:連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和の段階的縮小を決定
1月から8月までは順調に上昇したけど、8月以降はやや停滞した感じかな。
8月に算出開始から初の35,000米ドルに到達して、12月30日の終値は35719.43米ドルだったわけだから、確かに停滞感は否めないね。
それでも、連日のように最高値を更新していたりもするわけだから、新型コロナウイルス後のボーナス期間と言われているのもわかる気がする。
指数のチャートでここまできれいな右肩上がりもそうそうないからね。でも、順調なチャートも2021年11月までなんだよ。
FRBが量的緩和の縮小を決めたから?
そういうこと。段階的な緩和で2022年は2021年ほどの伸びは期待できないと大方の投資家は考えていたんだ。まさかそれ以上に展開になるとは……。
2022年:世界的な原油高とロシアのウクライナ侵攻
- 原油高の影響で年初から徐々に下落。
- ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、5月に再び30,000米ドル台に。
2022年はまだ始まったばかりだから、今後の動向を注視していくしかないね。でも、1月31日には、2021年の終値を大きく超えて、36799.65米ドルをつけていたんだ。
今後は、金融緩和の縮小度合い、原油高、ウクライナ侵攻の帰結次第ということかな?
世界情勢の変化に伴う物価の上昇が現在進行形で進んでいるね。どちらも株式市場にはプラスにもマイナスにも起因するからバランスが大切だね。
加えて、ウクライナ侵攻(というよりはロシアの出方)次第で、世界の在り方や価値観が変わってくる可能性もあるよね。そうなったら、だれも予測できないようなチャートになっていくだろうね。
他の指数との比較
次は、NYダウと他の指数を比較してみよう! 改めて、2020年1月から2022年5月のNYダウのチャートを見てみよう。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ)の2020年1月~2022年5月のチャート
2020年3月に底(18591.93米ドル)をついてから、2020年末に約30,000米ドルに回復。2021年8月に35,000ポイントの大台に到達。その後は軟調に推移しながら、2022年1月31日に最高値の36799.65米ドルをつけた感じだね。
そのとおり。比較のポイントは大まかに言うと、①新型コロナウイルス第1波からの回復過程(2020年1月~2021年3月)と、②回復後から現在まで(2021年3月~2022年5月)の変化の2つを見ていくことになるよ。
日経平均株価(日経225)の2020年1月~2022年5月のチャート
日経平均株価はプライム市場のうちの225銘柄の変動だから、NYダウに比べると変動幅は小さくなるね。また、日本の株式市場を表す指数は、米国の株価式場を表す指数に連動する傾向にあるんだ。
所々のブレには違いがあるけれど、全体的な形はかなり似ているね。
でも、2020年11月からの急激な上昇や、2021年9月の下落なんかを見ると、NYダウよりも日経平均株価の方が変動が大きいように感じるな。
日本の方が世界情勢に左右されやすいということかもしれないね。一方の米国は世界情勢そのものだったりするから、外要因による影響は受けにくいんだよ。
S&P500指数の2020年1月~2022年5月のチャート
2つのチャートはかなり近いかたちになっているね。
そうなんだけど、やはりNYダウの方がブレ幅が大きいね。
チャートのギザギザが多いもんね。
業種別のバランスは2つの指数で大きな違いはないんだけど、構成銘柄の数の差が如実に出た感じだね。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスの2020年1月~2022年5月のチャート
S&P500指数とMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスがほとんど同じかたちになっているから、NYダウとの違いも、2つの指数で共通ということかな。
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスは、対象地域・国の投資比率が米国に偏っているから、米国の株式市場の動きに強く影響されたチャートになるんだ。加えて、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスの1銘柄の影響は大きくないから、NYダウよりはS&P500指数により近いかたちになるね。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ)をベンチマークとする代表的な投資信託(つみたてNISA対応限定)
商品名 | 信託報酬 | トータルリターン(平均年率) |
iFree NYダウ・インデックス | 0.2475% | 25.86% |
eMAXIS NYダウ・インデックス | 0.6600% | 25.49% |
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つみたてNISA対象商品の中で、NYダウをベンチマークに使用しているものは2つだけなんだー。
しかも、2ファンドともアクティブ運用に分類されているね。
信託報酬はそこそこだけど、トータルリターンはとても大きいね。
対象が2ファンドしかないけど、どちらも平均年率が25%を超えているからね。米国の株式に投資しているだけあって、大きなリターンが期待できるよ。