【完全保存】従業員の保険料の控除と納付の手続き(社会保険編)
従業員の保険料の控除と納付の手続きに関するおおまかな項目は、次のようになっています。
- 標準報酬月額:報酬とされるもの・報酬とされないもの
- 社会保険料の控除:給与と賞与における社会保険料の控除
- 入社時の標準報酬月額の決定:被保険者資格取得届・70歳以上被用者該当届を提出する
- 標準報酬月額の定時決定:被保険者報酬月額算定基礎届・70歳以上被用者算定基礎届を提出する
- 標準報酬月額の随時改定:被保険者報酬月額変更届・70歳以上被用者月額変更届を提出する
上記の①~⑤の項目の詳細を説明していきます。
標準報酬月額
毎月の社会保険の保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)を算出する基となるのが標準報酬月額です。
社会保険における標準報酬月額とは、1か月分の給与(賃金)(=報酬)を保険料額表に当てはめたものになります。
報酬となるものは、給与・賞与などの名称の如何によらず、労働を提供した対価として受け取るものすべてが含まれます。具体的な判断は以下の表を参考にするといいでしょう。
社会保険料の控除
毎月の社会保険の保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)の額は、前述の標準報酬月額によって決まります。標準報酬月額は1年間(9月~翌8月)変わりません。
会社に所属する従業員の社会保険の保険料は、従業員と会社が折半して支払いますが、納付する義務は会社に課せられています。
社会保険の保険料は、毎月20日過ぎに年金事務所から前月分の社会保険の保険料の「納入告知書」が届き、当月の末日までに納付しなければなりません。
保険料は会社が納付しますが、その半分は従業員も支払わなければなりません。従業員分の保険料は、当付きの保険料を翌月の給与から控除する方法が一般的です。これを、保険料の翌月控除と言います。
必ず翌月控除を採用しなければいけないというわけではありません。納入告知書が届くタイミングと納付のタイミングのずれが最も小さくなるのがこの方法なだけです。
ただし、資格取得月と資格喪失月の納付には注意が必要です。社会保険の保険料は、その月の末日時点の加入状況で控除するかどうかが決まります。
給与(賃金)のみならず、賞与(ボーナス)を支払うときにも社会保険の保険料を納付する必要があります。賞与に係る保険料は、標準賞与額を基に算出します。
標準賞与額は、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額です。ただし、健康保険では年度(4月~翌3月)内573万円、厚生年金保険では1か月150万円の上限が定められています。
賞与に係る標準報酬月額は、管轄する年金事務所または健康保険組合に、「被保険者賞与支払届」を提出することで決定されます。
入社時の標準報酬月額の決定
標準報酬月額の決定は、次のようなタイミングで行われます。
- 資格取得時(社会保険の被保険者の資格を取得したとき):入社時に次の8月までの等級を決定する
- 定時決定:毎年7月1日に9月~翌8月までの等級を決定する
- 随時改定:固定的な賃金に大きな変動があったときに等級を改定する
- 産前産後休業・育児休業等終了時改定:産前産後休業・育児休業などの取得後に大きく賃金が下がったときに改定する
資格取得時の標準報酬月額は、月給制、週給制、日給制・時給制化によって算出方法が異なります。また、入社したばかりの従業員は、給与(賃金)を支払っていないため、報酬月額は見込み額で算出することになります。
資格取得時の標準報酬月額は、管轄する年金事務所または健康保険組合に、「被保険者資格取得届・70歳以上被用者該当届」を提出することで決定されます。
1月~5月の間に標準報酬月額を決定した場合はその年の8月まで、6月~12月までの間に決定した場合は翌年男8月まで適用されます。
標準報酬月額の定時決定
報酬は昇給・降給などで変動することがあります。実際の給与(賃金)と標準報酬月額に大きな差ができないように、1年に1回、標準報酬月額の見直しを行います。これを、標準報酬月額の定時決定と言います。
定時決定は、4月~6月の給与(賃金)の平均額を報酬月額として、標準報酬月額を算出します。
定時決定は、管轄する年金事務所または健康保険組合に、「被保険者報酬月額算定基礎届・70歳以上被用者算定基礎届」を提出することで決定されます。「被保険者報酬月額算定基礎届・70歳以上被用者算定基礎届」は7月1日~10日までの間に届け出なければなりません。
定時決定された標準報酬月額は、その年の8月~翌年の9月まで適用されます。ただし、6月1日~7月1日までの間に資格を取得した従業員や、7月~9月までの間に改定する人は定時決定の対象になりません。
標準報酬月額の随時改定
報酬月額は昇給・降給などで変動することがあります。実際の給与(賃金)と標準報酬月額に大きな差ができないように、1年に1回の定時決定以外にも、標準報酬月額の見直しを行うことができます。これを、標準報酬月額の随時改定と言います。
定時決定とは異なり、随時改定は次のような要件を満たさない限り行うことはできません。
- 固定的な賃金が大きく変動したこと
- 固定的な賃金の変動月から3か月間に支払われた賃金の平均額が、従前の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じたこと
- 固定的な賃金の変動月から3か月間に支払われた賃金の支払い基礎日数が、すべて17日以上であること
定時決定は、管轄する年金事務所または健康保険組合に、「被保険者報酬月額変更届・70歳以上被用者月額変更届」を提出することで決定されます。
以上で、従業員の保険料の控除と納付の手続きに関するおおまかな項目の説明が終わりました。
従業員の保険料の控除や納付に係る手続きは、すべて会社が行うものになります。手続きや納付の期限はシビアなものが多いですが、毎月・毎年ルーティーンで行うものになりますので、あらかじめ手順を覚えておくといいでしょう。