【完全保存】従業員の賃金が低下したときの手続き
従業員の賃金が低下したときの手続きに関するおおまかな項目は、次のようになっています。
- 産前産後休業:社会保険料の免除を申請
- 育児休業:社会保険料の免除を申請
- 産前産後・育児休業後の賃金低下①:標準報酬月額の見直し(社会保険料の見直し)
- 産前産後・育児休業後の賃金低下②:年金額低下を防ぐ措置の申請
上記の①~④の項目の詳細を説明していきます。
産前産後休業中の賃金低下
産前産後休業の間は、賃金が支払われなくなります。一方、産前産後休業の間も社会保険の資格は継続されるため、健康保険や厚生年金保険の保険料を納めなくてはなりません。
出産手当金が支給されるとはいえ、収入が下がった状態(出産手当金は給与の3分の2程度の額)で保険料が徴収されると、従業員の金銭的な負担が大きくなります。
そのため、社会保険には産前産後休業の間、社会保険の保険料の支払を免除する制度が設けられています。産前産後休業の間の保険料免除期間は、休業の開始月から休業の終了月の前月までです。
保険料免除期間も被保険者資格は継続されます。また、厚生年金保険においては、保険料免除期間も保険料を納めたものとみなされます。
ただし、産前産後休業の間の保険料免除は、あたりまえに行われるものではなく、申請手続きをして初めて認められるものになります。
産前産後休業の間の保険料免除の申請は、管轄する年金事務所または健康保険組合に、「産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」を提出することで行われます。
「産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」は、産前産後休業の開始前もしくは休業中に提出しますが、出産予定日と実際の出産日がずれて、休業を延長(変更)する場合や休業を予定よりも早く終了する場合には、改めて提出する必要があります。
育児休業中の賃金低下
育児休業の間は、賃金が支払われなくなります。一方、育児休業の間も社会保険の資格は継続されるため、健康保険や厚生年金保険の保険料を納めなくてはなりません。
育児休業給付金が支給されるとはいえ、収入が下がった状態(育児休業給付金は給与の67%もしくは50%程度の額)で保険料が徴収されると、従業員の金銭的な負担が大きくなります。
そのため、社会保険には育児休業の間、社会保険の保険料の支払を免除する制度が設けられています。育児休業の間の保険料免除期間は、休業の開始月から休業の終了月の前月までです。
保険料免除期間も被保険者資格は継続されます。また、厚生年金保険においては、保険料免除期間も保険料を納めたものとみなされます。
ただし、育児休業の間の保険料免除は、あたりまえに行われるものではなく、申請手続きをして初めて認められるものになります。
育児休業の間の保険料免除の申請は、管轄する年金事務所または健康保険組合に、「育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」を提出することで行われます。
「育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」は、育児休業の開始前もしくは休業中に提出しますが、育児休業の延長や仕事の復帰時期の前倒しにより、休業を延長する場合や休業を予定よりも早く終了する場合には、改めて提出する必要があります。
介護休業については休業の間の保険料免除制度はありません。
産前産後・育児休業後の賃金低下①
産前産後休業もしくは育児休業の取得後、子どもの養育のため、短時間勤務など、労働時間をセーブして働くことがあります。労働時間をセーブして働くなどの育児支援制度には、次のようなものがあります。
- 育児時間:1日2回30分以上を育児のためにあてることができる
- 所定外労働の制限:休日の労働を制限することができる
- 育児短時間勤務:所定労働時間を原則として6時間にすることができる。
- 子の看護休暇:子ども1につき1年間に5日(子どもが2人以上いる場合は10日)まで子どもの看護のための休暇を取得することができる
- 時間外労働の制限:時間外労働(残業)を制限することができる
- 深夜業の制限:深夜の業務を制限することができる
労働時間をセーブすることで、休業前よりも給与(賃金)は下がります。一方、社会保険の保険料は休業前と同じままということにもなり得ます。
そのため、産前産後休業もしくは育児休業の取得後に給与(賃金)が低下した場合は、通常(保険料の随時改定)よりも緩和された条件で標準報酬月額(保険料)の見直しをすることが認められています。
標準報酬月額(保険料)の見直しの申請は、管轄する年金事務所または健康保険組合に、「産前産後休業終了時報酬月額変更届」または「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出することで行われます。
標準報酬月額(保険料)の見直しは、3歳未満の子どもを養育する従業員に適用されますが、産前産後休業および育児休業を取得していることが前提となります。
産前産後・育児休業後の賃金低下②
3歳未満の子どもを養育する従業員が、上記のような育児支援制度を利用して労働し、標準報酬月額(保険料)が下がった場合、標準報酬月額(保険料)の見直しを行うことが可能であると説明しました。
しかし、社会保険の標準報酬月額(保険料)の見直しを行うということは、厚生年金保険においては将来の年金額が下がることと同義になります。
3歳未満の子どもを養育のために将来の年金額が下がることを防ぐため、厚生年金保険では標準報酬月額(保険料)が下がっても子どもが生まれる前の標準報酬月額(保険料)に基づいた年金額を受け取れるようになっています。これを、養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置と言います。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置の申請は、管轄する年金事務所に、「養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」を提出することで行われます。
以上で、従業員の賃金が低下したときの手続きに関するおおまかな項目の説明が終わりました。
従業員が妊娠・出産・育児・介護をするときの手続きは、従業員がそれぞれの休業や給付を希望したときに発生するものです。希望しない場合は、会社に手続きを行う義務は生じません。一方、それらの休業中や休業後に賃金が低下した場合、従業員の生活を豊かにするための手続きを行うことは会社の義務となります。