第三者行為災害届 Part2
(業務中または通勤中に)労働者が第三者の行為により被災したときに作成する書類が、「第三者行為災害届」です。
第三者の行為により傷病を負った労働者は、第三者に損害賠償を請求できます。しかし、業務中や通勤中に起きた災害は労働災害ともみなされ、労働者災害補償保険(以下、労災保険)の給付の対象にもなります。すると、第三者からの損害賠償と労災保険の給付とを二重に得ることになり、適正な賠償よりも大きな利益を得ることになります。
これを防ぐため、業務中または通勤中に、第三者の行為により傷病を負った場合、第三者行為災害届を管轄の労働基準監督署に提出することで、損害賠償と労災保険の給付の調整が図られます。
第三者とは、労働者と使用者以外の者のことです。労働契約の関係にある者の外にいる者と言えます。
第三者行為災害届は、記入事項が非常に多いため、2回に分けて説明していきます。今回は後半部分のPart2で、前半部分のPart1は次の記事で確認することができます。
第三者行為災害届の作成手順
それでは、第三者行為災害届を一緒に作成していきましょう。
今回は、「ハクチョウ塗装 有限会社」の従業員である「府羅実一足(ふらみひとあし)」さんをモデルに進めていきます。府羅実一足さんは、通勤中に「鵜飼飲子(うかいのむこ)」さんに車で撥ねられて右足の大腿骨を骨折しました。
- 第二当事者(相手方)の自賠責保険(共済)及び任意の対人賠償保険(共済)に関すること
- 運行供用者が第二当事者(相手方)以外の場合の運行供用者およびあなた(被災者)の人身傷害補償保険に関すること
- 事故発生状況
- 現場見取図
- 過失割合
- 示談について
- 身体損傷及び診療機関
- 損害賠償金の受領
- 事業主の証明
事務所やデスク周りに必要なものは楽天市場 でお得にそろえましょう!
第二当事者(相手方)の自賠責保険(共済)及び任意の対人賠償保険(共済)に関すること
①~⑥は相手方の自賠責保険の情報を、⑦~⑬は相手方の任意保険の情報を、⑭~⑯損害賠償金の請求状況を記入します。
①証明書番号、②保険(共済)契約者の氏名および住所、③第二当事者(相手方)と契約者との関係は、いずれもそのまま記入します。相手方に確認しましょう。相手方と契約者が異なる場合は注意が必要です。相手方から見た契約者との関係を記入します。相手方と契約者が同じ場合は「本人」と記入します。
相手方と連絡が取れない場合は、自身の任意保険の保険会社や弁護士などに相談しましょう。損害賠償金に関することは「民事」のことなので、警察に相談しても意味がありません。
④保険会社の管轄店名、⑤電話番号、⑥管轄店所在地は、いずれもそのまま記入します。相手方に確認しましょう。
⑦証券番号、⑨保険(共済)契約者の氏名および住所、⑩第二当事者(相手方)と契約者との関係は、いずれもそのまま記入します。相手方に確認しましょう。
⑧保険金額は、対人の賠償金額の上限を記入します。相手方に確認しましょう。上限がない場合は「無制限」と記入します。
⑪保険会社の管轄店名、⑫電話番号、⑬管轄店所在地は、いずれもそのまま記入します。相手方に確認しましょう。
⑭保険金(損害賠償額)請求の有無は、「有、無」のいずれかに〇を付けます。第三者行為災害届の作成時に保険金を請求していれば(相手方の自賠責保険や任意保険と保険金についてのやり取りをしていれば)「有」に〇を付けます。
⑮有の場合の請求方法は、「イ:自賠責保険(共済)単独、ロ:自賠責保険(共済)と任意の対人賠償保険(共済)との一括」のいずれかに〇を付けます。
⑯保険金(損害賠償額)の支払いを受けている場合は、受けた者の氏名、金額及びその年月日は、⑭とは異なり、実際に保険金を受けている場合に記入します。
運行供用者が第二当事者(相手方)以外の場合の運行供用者およびあなた(被災者)の人身傷害補償保険に関すること
①運行供用者が第二当事者(相手方)以外の場合の運行供用者は、相手方以外の者が運転していた場合に、その者氏名、電話番号、所在地(住所)などを記入します。
②~⑪は被災者の人身傷害補償保険に関する情報を記入します。
②人身損害補償保険の加入は、「加入している、加入していない」のいずれかに〇を付けます。「加入していない」に〇が付いた場合は、③~⑪まですべて未記入になります。
③証券番号、④保険金額、⑤保険(共済)契約者の氏名および住所、⑥あなた(被災者)と契約者との関係、⑦保険会社の管轄店名、⑧電話番号、⑨管轄店所在地は、いずれもそのまま記入します。自分の保険証書を確認しましょう。
⑩人身傷害補償保険金の請求の有無は、「有、無」のいずれかに〇を付けます。第三者行為災害届の作成時に保険金を請求していれば(自分の自賠責保険や任意保険と保険金についてのやり取りをしていれば)「有」に〇を付けます。
⑪保険金(損害賠償額)の支払いを受けている場合は、受けた者の氏名、金額及びその年月日は、実際に保険金を受けている場合に記入します。
災害発生状況
災害発生状況は、文章で記入します。災害発生時における第一当事者・第二当事者それぞれの行動、災害の原因がはっきりと分かるように記入します。災害が複雑で当該欄に収まらない場合は、別添しても構いません。
現場見取図
現場見取図は、表示符号を用いて災害現場の俯瞰図(事故現場を上から見た図)を記入します。表示符号と線で描きますが、注釈として文字を入れることもできます。災害が複雑で当該欄に収まらない場合は、別添しても構いません。
過失割合
①過失割合は、自分と相手の過失割合を記入します。警察や保険会社から聞いた過失割合ではなく、自分が思う過失割合を記入します。
自分が思う過失割ですから、いかなる数字を記入しても構いませんが、②の理由から大きく逸脱した割合は記入しない方がいいでしょう。
②原因は、①の過失割合になった原因を記入します。自分の非・相手の非を明確に記入できるといいでしょう。
示談について
示談については、「イ:示談が成立した、ロ:交渉中、ハ:示談はしない、ニ:示談をする予定、ホ:裁判の見込み」から該当するものに〇を付けます。「イ:示談が成立した」、「ニ:示談をする予定」、「ホ:裁判の見込み」は、その事実があった年月日もしくは予定している年月日も記入します。
保険金(損害賠償額)を前提とした示談では、保険金がすべて支払われていないと示談が成立したことになりません。第三者行為災害届の作成時に、保険金がすべて支払われていない場合は、交渉中もしくは示談をする予定に〇が付きます。
身体損傷及び診療機関
自分(被災者)と相手方の情報をそれぞれ記入します。相手方の情報は相手方に確認しますが、わかっている範囲の記入でも構いません。
①部位・障害名は、医療機関で診断された診断名などを記入します。
②程度は、治療期間などを記入します。
③診療機関名称、④所在地は、それぞれそのまま記入します。
損害賠償金の受領
第三者行為災害届の作成時までに受けた損害賠償金の情報(受領年月日、支払者、金額・品目、名目)を記入します。
事業主の証明
第二当事者(相手方)が業務中に起こった災害であった場合は、相手方の事業所の証明が必要になります。そのため、そのような場合には、第三者行為災害届を相手方の事業所に送る必要があります。
以上で、第三者行為災害届の後半部分の作成が終わりました。
第三者行為災害届は速やかに提出しなければならない書類ですが、大きな事故の場合、災害発生日からずいぶん後に作成・提出することになる可能性もあります。その場合、事故当時の記憶が曖昧になったり、事故がトラウマになっていたりすることもある上に、必要な情報を得るためには自分が所属する事業所、災害の相手方、警察、保険会社などに連絡しなければならいことも多く、被災者の精神的な負担が大きい書類になります。
そのため、所属する会社や被災者の家族が書類作成のサポートをしてあげるといいです。今回の記事が、その一助になれば幸いです。
第三者行為災害届の前半部分は、次のリンクから確認することができます。