【完全保存】退職後の従業員が行う手続き
退職後の従業員が行う手続きに関するおおまかな項目は、次のようになっています。
- 健康保険の選択:健康保険の加入方法を3パターンの中から選ぶ
- 健康保険の加入:選択したパターンの健康保険の加入手続きを行う
- 公的年金の変更:厚生年金保険から国民年金に切り替える
- 失業給付の受給:失業給付の受給手続きを行う
- 退職前から受けている給付の調整:退職前から受けている給付は基本的に継続する
健康保険の選択・加入、公的年金の変更、失業給付の受給が、退職後の主な手続きです。しかし、退職後すぐに転職する場合は、いずれの手続きも必要ありません。社会保険(健康保険・厚生年金保険)は転職後の会社で加入手続きが行われますし、前職から転職までの間に大きな空白期間がない場合は失業給付を受給することができないからです。
ただし、転職後の会社で社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入ができない場合は、①~③の手続きが必要になります。
上記の①~⑤の項目の詳細を説明していきます。
健康保険の選択
退職後の従業員(以後、すぐに転職しない場合を想定して説明していきます)は、何らかの形で健康保険に加入しなければなりません。健康保険の加入方法は、次の3つのパターンがあります。
- 被扶養者として家族の健康保険に加入する
- 国民健康保険に加入する
- 健康保険の任意継続被保険者になる
被扶養者として家族の健康保険に加入する
家族(扶養者)の会社で申請を行います。手続きに「健康保険・厚生年金保険 資格喪失証明書」や「離職票」を求められることもあります。保険料はかかりませんが、一定の収入(失業給付含む)があると被扶養者として認められず、加入できない場合もあります。
国民健康保険に加入する
住んでいる地域の自治体で申請を行います。手続きに「健康保険・厚生年金保険 資格喪失証明書」や「離職票」を求められることもあります。保険料はかかります。
健康保険の任意継続被保険者になる
退職した会社の全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合で申請を行います。保険料はかかりますが、国民健康保険の保険料よりは割安なことが多いです。
健康保険の加入
被扶養者として家族の健康保険に加入する場合、国民健康保険に加入する場合、健康保険の任意継続被保険者になる場合の3つのパターンで、加入期限が設けられているのは健康保険の任意継続被保険者になる場合だけです。
しかし、健康保険に加入していないと、急な事故や病気の場合に給付を受けられなくなる可能性がありますので、速やかに手続きをするといいでしょう。
被扶養者として家族の健康保険に加入する場合
従業員が行う手続きはありません。
国民健康保険に加入する場合
「健康保険・厚生年金保険 資格喪失証明書」、世帯主の印鑑、マイナンバー(通知カードまたはマイナンバーカード)、身分証明書(運転免許証またはパスポート)を持って、自治体の窓口に行きます。
健康保険の任意継続被保険者になる場合
資格喪失日(退職日の翌日)から20に日以内に、退職した会社が加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合で手続きを行わなければなりません。
健康保険の任意継続被保険者になる場合の提出書類は、「健康保険 任意継続被保険者資格取得申出書」です。
退職前まで会社が半分払っていた保険料が、任意継続被保険者の場合は、全額自己負担となります。そのため、任意継続被保険者のときの保険料と国民健康保険加入者のときの保険料はほとんど同じになります。
ただし、健康保険では被扶養者の保険料が免除され、この効力は任意継続被保険者にも引き継がれるため、扶養する家族が多いときは、結果として任意継続被保険者のときの方が割安となります。
公的年金の変更
会社の従業員であったときは厚生年金保険(第2号被保険者)であったため、保険料は給与から自動的に控除されていました。退職した後に、自営業者や無職になった場合は国民年金(第1号被保険者)に変更され、(サラリーマンの)家族の被扶養者になった場合は第3号被保険者に変更されます。
第1号被保険者
20歳以上60歳未満で、第2号被保険者でも第3号被保険者でもない者。学生・無職・自営業者・自営業者の配偶者などが該当する。自ら保険料を納めなければならない。
第2号被保険者
社会保険に加入する会社に勤める者(サラリーマン)。年齢にかかわらず、すべてのサラリーマンが該当する。保険料は給料から自動的に控除され、保険料の半分は会社が払う。
第3号被保険者
20歳以上60歳未満で、第2号被保険者に扶養される者。サラリーマンの妻が該当する。保険料はかからない。
サラリーマンの夫と専業主婦の妻の世帯の場合、夫が会社を退職し、自営業を始めると、夫は第1号被保険者になります。それと同時に、妻は「第2号被保険者に扶養される者」ではなくなるため、妻も第1号被保険者になります。
失業給付の受給
雇用保険の失業給付は、(一定期間)雇用保険に加入していた退職者が、公共職業安定所(ハローワーク)に求職の申し込みをし、就職しようとする積極的な意思・行動があり、就職できる能力があるのに就職できずに失業の状態にある場合に支給されます。
そのため、病気・ケガ、出産・育児、介護、休養などですぐに就職しない場合は、失業手当を受給することができません。
雇用保険の失業給付は、退職者が公共職業安定所(ハローワーク)に出頭し、「離職票」を提出するところから始まります。離職票を受けた公共職業安定所(ハローワーク)は、退職者が失業給付の受給資格があると認めたら、失業の認定日を知らせるとともに「受給資格者証」を交付します。
「受給資格者証」を交付された退職者(受給資格者)は、失業の認定日に公共職業安定所(ハローワーク)に出頭し、「失業認定申告書」に「受給資格者証」を添えて提出したうえで、職業の紹介を求めます。公共職業安定所(ハローワーク)は、受給資格者の経歴や条件に合った職業の紹介や就職の支援をするとともに、失業の認定を行うことで失業給付を支給します。
失業給付の受給の流れで説明したいくつかの書類のうち、「離職票」、「受給資格者証」は退職者が作成するものではなく、「失業認定申告書」は退職者が公共職業安定所(ハローワーク)で作成するものです。
退職前から受けている給付の調整
労災保険の給付は、退職を理由に終了することはありません。労働災害による傷病の治療や働けない状態が継続する限り、労災保険の給付を請求することができます。
労災保険の給付には、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などがあります。このうち、休業補償給付は、労働災害による傷病により働けない期間を(金銭的に)補償するもので、退職者が自ら1か月ごとに、管轄する労働基準監督署に請求しなければなりません。
休業補償給付を請求するときの必要書類は、「労働者災害補償保険 休業補償給付支給請求書」または「労働者災害補償保険 休業給付支給請求書」です。
以上で、退職後の従業員が行う手続きに関するおおまかな流れの説明が終わりました。
退職後の従業員がすぐに就職しない場合には、期限の決められたいくつかの手続きを行う必要があります。休職中の社会保障や金銭や就職の支援を受けるための重要な手続きですが、いずれも退職者自ら申請・請求しなければなりません。
そのため、従業員が退職する前に、諸々の手続きの必要の有無と、手続きを円滑に進める支援をしておくといいでしょう。