【徹底解剖】不動産投資信託証券(REIT)およびREITの指数
つみたてNISA対応の投資信託は、2022年4月現在、約200本あります。このうち、半数以上が株式だけを投資対象としています。一方、不動産投資信託証券(REIT)だけを投資対象としている商品はありません。
つみたてNISA対応の投資信託において、不動産投資信託証券(REIT)で運用したいと考えた場合は、複数の資産で構成されたバランス型の投資信託を選択することになります。
今回は、つみたてNISA対応の投資信託の投資対象となる不動産投資信託証券(REIT)と、その指数について説明していきます。(つみたてNISA対応の投資信託において)不動産投資信託証券(REIT)の指数が株式の指数と異なるのは、債券の指数は合成ベンチマークの要素として採用されるため、一の指数だけをとらえていても意味がないということです。
そのため、本記事では指数の紹介はそこそこに、投資信託や不動産投資信託証券(REIT)の全体像についても説明していきたいと思います。
つみたてNISA対応の投資信託における不動産投資信託証券(REIT)とその指数
つみたてNISA対応の投資信託における不動産投資信託証券(REIT)とその指数には、以下のようなものがあります。
それぞれの指数の詳細は、以下のとおりです。
東証REIT指数 東京証券取引所に上場する不動産投資信託証券(REIT)の全銘柄を対象とした時価総額加重型の指数です。算出対象銘柄ごとの価格に、上場口数を乗じた(ウエイト)した時価総額加重平均で算出します。基準日である2003年3月31日の時価総額を1,000(基準値)としています(算出開始日は2003年4月1日)。東証REIT指数は、日本の不動産投資信託証券(J-REIT)を代表する投資収益指数で、①日本の不動産投資市場の動向を的確に反映、②他の株価指数と資産構成が違うため、異なった動きをする不動産投資信託証券(REIT)全体の動きについて売買することが可能、③日本の不動産投資信託証券(J-REIT)全銘柄を対象としているため、個別銘柄の動きに左右されずに市場の動きを的確に反映、④時価総額の変動を反映するため、不動産投資信託証券(REIT)を含む保有ポートフォリオを時価総額でヘッジすることが可能、⑤有償増資、新規上場、上場廃止など市況以外の要因による時価総額の変動に影響されないように時価総額を修正して指数の連続性を確保、などの特徴があります。 |
S&P 先進国REITインデックス 先進国を本拠地として上場している不動産投資信託証券(REIT)の広範な指数です。先進国15か国程度・350~400程度の不動産投資信託証券(REIT)銘柄から構成されています。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが米ドル建てで算出・公表しています。国・地域別の構成比率は、米国が65%以上のウエイトになっています。次いで、日本・豪州・英国が6%程度、フランスが5%程度、シンガポール、香港、カナダなどが数%となっています。つみたてNISAに採用されているS&P 先進国REITインデックスは、日本が除かれている場合が多く、相対的に米国のウエイトが高かくなります(70%程度)。 |
東証REIT指数のチャート(2020年1月~2022年5月)
S&P 先進国REITインデックスのチャート(日本を除く)(2020年1月~2022年5月)
東証REIT指数は、新型コロナウイルス感染症の流行前の値に達していません。2022年2月に一時的に2,300ポイントまで迫りましたが、その後は2,000ポイントを下回る推移で経過しています。一方、S&P 先進国REITインデックスは、2021年9月に新型コロナウイルス感染症の流行前の値を超え、2022年4月までは300ポイントを超えて推移しています。しかし、2022年5月に再び300ポイントを下回りました。
投資信託の分類
最初に投資信託とは何かということを説明します。
投資信託とは、多数の投資家から資金を集め、第三者である専門家が株式や債券などに分散投資し、運用・管理する金融商品のことです。その運用成果が投資額に応じて投資家に分配されます。また、次のような特徴も持っています。
- 元本は保証されていない。
- 少額の資金で投資が可能。
- 投資した資金は専門家によって運用・管理される。
- 株式や債券などに分散投資できる。
投資信託の分類
- 公募投資信託:不特定かつ多数の投資家に販売する投資信託です。投資の対象は個人投資家になります。
- 私募投資信託:特定または少数の投資家に販売する投資信託です。運用やディスクロージャー(情報開示)の規制は公募投資信託よりも緩くなる傾向にあります。
- 契約型投資信託:委託者と受託者の契約によって成立する投資信託です。受益者(投資家)は契約によって設定された投資信託の受益権を取得します。現在、国内で販売されている投資信託のほとんどが契約型投資信託です。
- 会社型投資信託:投資信託自体が1つの会社になっている投資信託です。投資家はその投資信託の投資口を取得します。代表的なものに不動産に投資する不動産投資信託(REIT)があります。
投資信託の財産は受託会社である信託銀行で分別管理されるため、受託会社である信託銀行が破綻しても投資信託の財産は保全されます。
会社型投資信託は投資信託という名前こそ冠しているものの、どちらかというと株式のような運用に近い扱いになります。
契約型投資信託の種類
- 株式投資信託:株式にも投資が許されている投資信託です。実際には公社債だけで運用されている投資信託でも、定款で株式にも投資することが許されている場合は株式投資信託となります。
- 公社債投資信託:株式を一切組み入れることができない投資信託です。投資先は国債、地方債、社債、コマーシャルペーパー(CP)、外国法人が発行する譲渡性預金証書、国債先物取引などに限られます。
- 単位型投資信託:投資家から集めた資金で最初に投資信託が設定されると追加の設定は行われず、その資金のみを使って運用を行う投資信託です。信託期間は数か月~10年程度と比較的短いのも特徴です。
- 追加型投資信託:最初の設定以降も次々と追加購入することができる投資信託です。投資期間が無制限または長期のものがほとんどです。
- クローズド・エンド型投資信託:解約できない投資信託です。投資信託の純資産の流出が少なく、安定的に運用することできます。ただし、換金は市場価格での売却になるため、必ずしも純資産価格(基準価格)通りの価格で売却できるとは限りません。
- オープン・エンド型投資信託:解約できる投資信託です。解約されるたびに投資信託の純資産が減少するため、運用に支障が生じる可能性があります。一方、自由に解約できることで機動的な運用も可能になります。
運用スタイル
パッシブ運用
パッシブ運用はベンチマークに連動した運用成果を目指す運用です。アクティブ運用の投資信託に比べてコストを低く抑えることができます。パッシブ運用の代表的なものにインデックスファンドがあり、株価指標や債券指標などのベンチマークが用いられます。
アクティブ運用
アクティブ運用はベンチマークを上回る運用成績を目指す運用です。ベンチマークを上回るためにはベンチマークと違う銘柄を選んだり、銘柄の構成割合を変えたりする方法があります。銘柄の調査を入念に行うなどの時間やコスト増えるため、パッシブ運用よりも信託報酬が高くなります。
- トップダウン・アプローチ:銘柄の絞り込みをマクロ経済に対する調査・分析的視点から行います。要するに、現在の世の中の情勢や経済に応じて銘柄を絞り込む方法です。
- ボトムアップ・アプローチ:銘柄の絞り込みを個別の企業に対する調査・分析から行います。要するに、個別の企業の特色に応じて銘柄を絞り込む方法です。
- バリュー株投資:現在の株価が会社の実力と比べて割安と判断した銘柄を中心にポートフォリオ(資産構成)を組成します。割安か割高かの判断はPERやPBRなどを使います。バリュー株投資では基本的に割安の銘柄を組み入れるため、PERやPBRの低い銘柄を中心にポートフォリオが組まれます。
- グロース株投資:将来の成長を重視してポートフォリオを組成します。バリュー株投資で重視するPERやPBRが割高の傾向を示していても、その銘柄に将来性があると判断すればその銘柄を組み入れます。結果、グロース株投資のファンドでは、PERやPBRが高い銘柄が多く組み入れられる傾向にあります。
上場投資信託証券(ETF)
上場投資信託証券(Exchange Traded Fund:ETF)は、証券取引所に上場されている投資信託のことです。インデックスファンドと同じように指標と連動するように設定されています。一般的な投資信託は基準価額に基いて取引されますが、ETFは上場株式と同様に市場価格で取引されるのが特徴です。そのため、取引の方法も含めて株式と同じような取り扱われ方をされます。
成行注文や指値注文も可能で、購入や売薬に委託手数料がかかるのも株式の取引と同じです。
最大の特徴は現物株式を拠出することで、ETFを購入できることです。一般的な投資信託は基本的に現金で証券を購入しますが、ETFでは自分が保有している株式を拠出し、それを証券化して購入することができます。もっと言えば、一般的な投資信託では証券化された商品を購入しているだけであって、実際には株式や債券などの現物を保有しているわけではありませんが、ETFでは本質的な価値の裏付けとなる現物を保有しているわけです。
最後にETFの特徴を他の投資と比べておきます。
株式 | ETF | インデックスファンド | |
注文方法 | 成行注文・指値注文可能 | 成行注文・指値注文可能 | 成行注文・指値注文不可 |
運用管理費用 | なし | インデックスファンドよりも低い | ETFよりも高い |
取引価格 | 市場価格 | 市場価格 | 基準価額に基づく |
不動産投資信託証券(REIT)
不動産投資信託証券(REIT)は、不動産や不動産関連の権利および不動産関連商品を主たる投資対象とする投資信託です。投資対象である不動産は株式や債券に比べて流動性が低い資産なので、基本的に信託財産の解約ができないクローズド・エンド型の投資信託として設定されます。解約はできませんが、取引所で売却することはできます。
国内の証券取引所に上場されているREITを上場不動産投資信託(J-REIT)と呼びます。J-REITの売買は、ETFと同じような扱いになります。
不動産は小口投資(少額の投資)には向いていませんでしたが、REITの登場により、小口投資の道が開けました。