第三者行為災害届 Part1

 

 

(業務中または通勤中に)労働者が第三者の行為により被災したときに作成する書類が、「第三者行為災害届」です。

第三者の行為により傷病を負った労働者は、第三者に損害賠償を請求できます。しかし、業務中や通勤中に起きた災害は労働災害ともみなされ、労働者災害補償保険(以下、労災保険)の給付の対象にもなります。すると、第三者からの損害賠償と労災保険の給付とを二重に得ることになり、適正な賠償よりも大きな利益を得ることになります。

これを防ぐため、業務中または通勤中に、第三者の行為により傷病を負った場合、第三者行為災害届を管轄の労働基準監督署に提出することで、損害賠償と労災保険の給付の調整が図られます。

井上とまと

第三者とは、労働者と使用者以外の者のことです。労働契約の関係にある者の外にいる者と言えます。

第三者行為災害届は、記入事項が非常に多いため、2回に分けて説明していきます。今回は前半部分のPart1で、後半部分のPart2は次の記事で確認することができます。

 

第三者行為災害届の作成手順

 

それでは、第三者行為災害届を一緒に作成していきましょう。

今回は、「ハクチョウ塗装 有限会社」の従業員である「府羅実一足(ふらみひとあし)」さんをモデルに進めていきます。府羅実一足さんは、通勤中に「鵜飼飲子(うかいのむこ)」さんに車で撥ねられて右足の大腿骨を骨折しました。

 

 

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欄外上

①書式名の(業務災害・通勤災害)および(交通事故・交通事故以外)は、は業務災害・通勤災害および交通事故・交通事故以外のいずれかに〇を付けます。今回は、通勤中の交通事故であるため、「通勤災害」と「交通事故」に〇を付けます。

②右上の日にちを記入するところには、第三者行為災害届を作成した日を記入します。

③左端の「___労働基準監督署長 殿」には、事業場がある地域を管轄する労働基準監督署(長)の名称を記入します。ハクチョウ塗装は、大阪府堺市中区にありますから、ここでは「堺」と記入します。

④保険給付請求権者には、保険給付請求権者の住所、郵便番号、氏名(フリガナ)、電話番号を記入します。

井上とまと

保険給付請求権者とは、第三者行為災害届における第一当事者(被災者)のことです。

 

第一当事者(被災者)

①氏名(フリガナ)②性別③生年月日④住所は、いずれもそのまま記入します。

⑤職種は、就業形態、就労形態、資格の名称、役職名などを記入します。

 

第一当事者(被災者)の所属事業場

①労働保険番号は、そのまま記入します。事業所に確認しましょう。

労働保険番号
事業所(会社)が労働保険に加入したときに、労働基準監督署から振り出されるものです。番号は保険関係成立届で確認できますが、インターネット検索などでは確認できません。

②名称③電話番号④所在地⑤郵便番号は、いずれもそのまま記入します。

⑥代表者は、役職と氏名を記入します。

⑦担当者は、労災保険に関する担当者の所属部課名と氏名を記入します。

 

災害発生日

①日時は、年月日と日時を記入します。

②場所は、そのまま記入します。

井上とまと

○○市○○町○○丁目○○番地○○号○○商店前の国道○○号歩道などのように、できるだけ詳しく記入するようにしましょう。

 

第二当事者(相手方)

①氏名②年齢③電話番号④住所⑤郵便番号は、いずれもそのまま記入します。相手方に確認しましょう。

⑥第二当事者(相手方)が業務中であった場合には、所属事業場名称、電話番号、所在地、郵便番号、代表者の役職・氏名を記入します。

井上とまと

相手方が通勤中だった場合は、第二当事者(相手方)が業務中であった場合の欄を記入しなくて構いません。通勤中は業務に含まれませんから。

 

災害調査を行った警察署又は派出所の名称および災害発生の事実の現認者

①災害調査を行った警察署又は派出所の名称は、当事者が通報した警察署や派出所の名称を記入します。多くの場合、災害調査を行った警察署または派出所から、連絡用のカードなどをもらえます。そこに書かれている名称を記入するといいでしょう。

②災害発生の事実の現認者は、警察などの介入がなく、災害を直接的に確認した者がいたときに、その者の氏名、年齢、電話番号、住所、郵便番号を記入します。

井上とまと

災害が発生した場合は、基本的に通報して警察を呼びましょう。

 

あなたの運転していた車両

当該欄はあなた(被災者)が運転していた場合に記入します。

①車種は、「大・中・普・特・自二・軽自・原付自」から該当するものに〇を付けます。

車種について
大:大型車(総重量11トン以上)
中:中型車(総重量8トン以上)
普:普通車
特:特殊な車両(トレーラーやトラッククレーンなど)
自二:普通自動二輪車(バイク)
軽自:軽自動車
原付自:原動機付自転車(スクーター)

②登録番号(車両番号)は、そのまま記入します。ナンバープレートの番号ですね。

③免許の有無は、「有・無」のいずれかに〇を付けます。

④免許の種類⑤免許証番号⑥資格取得⑦有効期限⑧免許の条件は、いずれもそのまま記入します。すべて運転免許証に記載されています。

 

事故現場の状況

①天候は、「晴・曇・小雨・雨・小雪・雪・暴風雨・霧・濃霧」から該当するものに〇を付けます。

②見通しは、「良い・悪い」のいずれかに〇を付け、「悪い」に〇が付いた場合には、(括弧)に詳細を記入します。

③道路の状況は、被災者が運電車であった場合と歩行者であった場合で記入する項目が異なります。被災者が運電車であった場合は、道路の幅、舗装・非舗装の選択、坂の形状、路面状態などを記入・〇付けします。被災者が歩行者であった場合は、歩車道の区別の有無、道路の性質などを記入・〇付けします。

④標識は、災害の発生場所が道路である場合に、その道路に適応されている制限速度や規則、標識などを記入・〇付けします。

井上とまと

駐車場や広場などの事故では、おおむね未記入になります。

⑤信号機は、災害の発生場所が信号のある道路である場合に、信号機の性質などを記入・〇付けします。

⑥交通量は、「多い・少ない・中位」いずれか該当するものに〇を付けます。

 

事故当時の行為、心身の状況及び車両の状況

①心身の状況は、「正常・いねむり・疲労・わき見・病気・飲酒」のいずれか該当するものに〇を付けます。「病気」に〇が付いた場合は、傷病名も記入します。

②あなたの行為は、被災者が運電車であった場合と歩行者であった場合で記入する項目が異なります。被災者が運電車であった場合は、いずれも事故が発生した当時の詳細な行動を記入します。ただし、事故発生時の記憶が曖昧であったり、ない場合には無理に記入する必要はありません。

 


 

以上で、第三者行為災害届の前半部分の作成が終わりました。

 

第三者行為災害届は速やかに提出しなければならない書類ですが、大きな事故の場合、災害発生日からずいぶん後に作成・提出することになる可能性もあります。その場合、事故当時の記憶が曖昧になったり、事故がトラウマになっていたりすることもある上に、必要な情報を得るためには自分が所属する事業所、災害の相手方、警察、保険会社などに連絡しなければならいことも多く、被災者の精神的な負担が大きい書類になります。

そのため、所属する会社や被災者の家族が書類作成のサポートをしてあげるといいです。今回の記事が、その一助になれば幸いです。

第三者行為災害届の後半部分は、次のリンクから確認することができます。

 

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