【完全保存】従業員が私生活で病気・ケガをしたときの手続き

 

 

従業員が私生活で病気・ケガをしたときの手続きに関するおおまかな項目は、次のようになっています。

 

  • 社会保険の保障:医療費と休業保障は健康保険・障害や死亡の保障は厚生年金保険
  • 保険証の有無:健康保険証を提示できなかったときは手続きが必要になる
  • 傷病手当金の受給:要件を満たせば休業4日目から支給される
  • 高額療養費制度:1か月の医療費が高額になった場合に請求する
  • 埋葬料の受給:被保険者などを埋葬したときに支給される

 

社会保険に加入している従業員が私生活で負った病気やけがに関する給付は、健康保険で受けることができます。健康保険の給付は、基本的に被保険者が手続きを行わなければなりませんが、会社もできる限り手続きが円滑に進むよう支援する必要があります。

 

上記の①~⑤の項目の詳細を説明していきます。

 

 

社会保険の保障

 

従業員が私生活で病気・ケガを負い、医療機関で診察を受けるとき、健康保険証を提示することで、医療費の負担割合が軽減されます。これを、健康保険の療養の給付と言います。また、被扶養者も同様に医療費の負担割合が軽減されます。これを、健康保険の家族療養費と言います。

私生活で負った病気・ケガが原因で、一定の障害状態や死亡したときは厚生年金保険から障害厚生年金や遺族厚生年金が支給されます。健康保険同様に、申請は被保険者または被保険者の遺族ですが、会社を経由して健康保険組合や年金事務所に書類を提出するのが一般的です。

 

保険証の有無

 

保険証を提示して医療機関で診察・治療・処方を受けた場合、特別な手続きをすることなく、負担割合が軽減されます。

一方、何らかの理由(忘れ・紛失・破損など)で保険証を提示できない場合は、負担割合が軽減されず、医療費を全額支払わなければなりません。ただし、同月内に保険証を提示できる場合は、保険証を提示したものとみなして負担割合が軽減されたり、負担分を差し引いた医療費の払い戻しを受けることができます。

次の診察までの期間が長かったり、再診の予定がないにもかかわらず保険証を提示できなかった場合には、医療費を全額支払った後で、保険者に負担分を差し引いた医療費を返金してもらう必要があります。

 

医療費の返金を求めるときは、保険者(全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合)に、「健康保険 医療費支給申請書」を提出しなければなりません。

「健康保険 医療費支給申請書」の提出の際には、診療報酬証明書(レセプト)や「負傷原因届」などを添付する必要があります。

ちなみに、保険証を紛失・破損した場合には、速やかに「健康保険 被保険者証回収不能届」を提出し、保険証の再交付を求めましょう。

 

傷病手当金の受給

 

従業員が私生活で負った病気・ケガにより、働くことができなくなったときは、健康保険から生活保障のための金銭的な支援を受けることができます。これを、傷病手当金と言います。

 

傷病手当金は、次のような要件を満たすことで受給できます。

  • 私生活で負った病気・ケガが原因で働けないこと
  • 傷病について医師の診断があること
  • 休業が4日以上に及ぶこと(連続する3日間の待機期間を経過したこと)
  • 休業中に賃金が支払われていないこと

 

傷病手当金は、保険者(全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合)に、「健康保険 傷病手当金支給申請書」提出して請求します。

井上とまと

傷病手当金の額は、月給のおおむね3分の2で、最長で1年6か月間受給することができます。請求は1か月ごとにする必要があります。

 

高額療養費制度

 

私生活で負った病気・ケガにかかる医療費が高額になったとき、自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。これを、高額療養費と言います。

高額療養費は自己負担分を支払った後、保険者(全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合)に、「健康保険 高額療養費支給申請書」を提出することで、自己負担限度額を超えた分が払い戻されるかたちをとっているため、一時的にではありますが、高額の自己資金が必要になります。

そのため、あらかじめ医療費が高額になることが分かっている場合(長期入院や高度な治療が必要な場合)は、保険者(全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合)に「限度額適用認定証」交付してもらうことで、自己負担限度額が自己負担の上限となり、少ない自己資金でも対応できるようになります。

「限度額適用認定証」は、保険者(全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合)に、「健康保険 限度額適用認定申請書」を提出することで交付されます。

 

埋葬料の受給

 

従業員(被保険者)が私生活で負った病気・ケガにより、死亡したとき、被保険者によって生計を維持している遺族がいる場合には、埋葬費用として埋葬料が支給されます。また、埋葬料を受給する遺族がいないときに、実際に埋葬を行った人がいた場合には、埋葬費用として埋葬費が支給されます。

井上とまと

埋葬料は一律5万円ですが、埋葬費は5万円を上限とした実費になります。

 

埋葬費および埋葬料は、保険者(全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合)に、「健康保険 埋葬料(費)支給申請書」を提出することで受給できるようになります。

「健康保険 埋葬料(費)支給申請書」には、「死亡診断書」、「住民票」、(埋葬費の場合には)「費用の明細書や領収書」を添付しなければなりません。

 

以上で、従業員が私生活で病気・ケガをしたときの手続きに関するおおまかな項目の説明が終わりました。

 

前述のとおり、健康保険の給付は、基本的に被保険者が手続きを行わなければなりません。ただし、会社は円滑に手続きが行わるように支援する必要があります。

長期入院や手術を伴う治療では、医療費も高額になることが多く、従業員の金銭的な負担が一時的に大きくなることもあります。そのため、従業員に保険証の提示や高額療養費制度を勧めることも重要になります。

 

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