【徹底比較】MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスをベンチマークとする投資信託【2022年上半期】
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスは、全世界を対象とした株価指数として世界中で広く利用されています。その高い指標性は、相場動向を測る指標としてだけでなく、多くの金融商品でも活用されています。
全世界の株式に投資する投資信託のベンチマークとしても有名です。MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスをベンチマークとする投資信託は非常に多く、つみたてNISA対応の投資信託は11本あります(2022年4月現在)。
今回は、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスをベンチマークに採用するつみたてNISA対応の商品11本を多角的に比較し、当サイト独自のランキングを決めていきたいと思います。
いきなり結果発表
理由はこれから説明していきます。
ランキング候補一覧
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスに採用するつみたてNISA対応の投資信託
商品名 | 委託会社 | 設定日 |
たわらノーロード・全世界株式:たわら | アセットマネジメントOne株式会社 | 2019年7月22日 |
全世界株式インデックスファンド:SSGA | ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)株式会社 | 2017年9月8日 |
野村・つみたて外国株投信:野村 | 野村アセットマネジメント株式会社 | 2017年10月2日 |
三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド:三井住友 | 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 | 2011年4月18日 |
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本):eMAXIS S(除く日本) | 三菱UFJ国際投信株式会社 | 2018年3月19日 |
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):eMAXIS S(AC) | 三菱UFJ国際投信株式会社 | 2018年10月31日 |
eMAXIS 全世界株式インデックス:eMAXIS | 三菱UFJ国際投信株式会社 | 2010年7月20日 |
つみたて全世界株式:つみたて | 三菱UFJ国際投信株式会社 | 2020年3月6日 |
Smart-i Select 全世界株式インデックス:Smart-i | りそなアセットマネジメント株式会社 | 2022年4月27日 |
Smart-i Select 全世界株式インデックス(除く日本):Smart-i(除く日本) | りそなアセットマネジメント株式会社 | 2022年4月27日 |
セゾン・資産形成の達人ファンド:セゾン | セゾン投信株式会社 | 2007年3月15日 |
設定日が最も古いものは、2010年7月20日のeMAXIS 全世界株式インデックス、最も新しいものは2022年4月27日のSmart-i Select 全世界株式インデックスおよびSmart-i Select 全世界株式インデックス(除く日本)です。
アクティブ運用に区分されているセゾン・資産形成の達人ファンドは、厳密にはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスに応じた運用をしていないため、今回のランキングは参考程度のものとして見てください。
Smart-i Select 全世界株式インデックスおよびSmart-i Select 全世界株式インデックス(除く日本)は、設定日が2022年4月27日で、つみたてNISAの対象となったのも同年4月です。現在、ほとんどの数的データが揃っていないため、今回のランキングではほとんどの項目で除外となっています。
基準価額&騰落率ランキング
基準価額は、三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド、eMAXIS 全世界株式インデックス、セゾン・資産形成の達人ファンドの3ファンドが30,000を超え、4位以下を大きく引き離しています。上位3ファンドはいずれも設定から10年以上経過しています。
騰落率は、eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)とeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の2ファンドが驚異の50%オーバーとなっています。3位以下は50%に届かないものの、3位の野村つみたて外国株投信や4位のつみたて全世界株式は40%超と十分に素晴らしい数字です。また、最下位のeMAXIS 全世界株式インデックスですら10%を超えており、指数自体の人気の高さがうかがえます。
純資産総額&資産の流入出ランキング
純資産総額は、185,489百万円(約1,855億円)のセゾン・資産形成の達人ファンドと、155,341百万円(約1,553億円)のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)がトップ2で、3位以下を大きく引き離しています。次に、三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンドが続きますが、下位層のたわらノーロード・全世界株式やつみたて全世界株式は心もとない数字です。
資産の流入出は、1~7の7段階で評価しています。いずれも、直近3年間(2019年~2021年)の資産の流入出の合計額を基準に評価をつけています。詳細は以下のとおりです。
- 50億円超のマイナス
- 10億円以上50億円未満のマイナス
- 10億円未満のマイナス~10億円未満プラス
- 10億円以上50億円未満のプラス
- 50億円以上200億円未満のプラス
- 200億円以上500億円未満のプラス
- 500億円以上のプラス
資産の流入出の状況と純資産総額の順位はほぼ同じです。純資産総額トップ2に加えて、3位の三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンドの3ファンドは3年間で500億円以上の資産が流入しています。
トータルリターン(平均年率)ランキング
トータルリターンは、設定から2022年4月または5月までの平均的な年率で表しています。具体的には、設定来のトータルリターンを設定から2022年4月または5月までの月数で除した値に12を乗じて得た数字となっています。
平均年率30%以上のファンドこそありませんが、1位から4位までは平均年率が20%を超え、4位以下のファンドも10%は超えています。全体的に安定したリターン得られる傾向にあるようです。
設定から3年が経過しているのは、11ファンド中7ファンドで、上位4ファンド(野村・つみたて外国株投信、三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド、eMAXIS 全世界株式インデックス、全世界株式インデックスファンド)はいずれも18%を超えています。一方、アクティブ運用のセゾン・資産形成の達人ファンドは11.56%とやや劣ります。
信託報酬ランキング
0.1%を割るファンドはありませんが、全体的に信託報酬は小さく抑えられています。1位は同率で4ファンド(eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、Smart-i Select 全世界株式インデックス、Smart-i Select 全世界株式インデックス(除く日本))が並びます。次点でたわらノーロード・全世界株式が0.1320%で続きます。下位の3ファンド(全世界株式インデックスファンド、セゾン・資産形成の達人ファンド、eMAXIS 全世界株式インデックス)は0.5%以上の数字になっています。アクティブ運用のセゾン・資産形成の達人ファンドの信託報酬が0.5720%というのはポジティブに捉えていいでしょう。
購入時手数料と信託財産留保額(解約時手数料)がかかるのは、全世界株式インデックスファンド、セゾン・資産形成の達人ファンド、eMAXIS 全世界株式インデックスと、信託報酬の下位層と同じでした。
おまけ
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスをベンチマークに採用するつみたてNISA対応の投資信託(11ファンド)のうち、10ファンドはインデックスファンドとなっています。インデックスファンドの重要な評価事項の1つに、「ベンチマークとの乖離度」があります。
インデックスファンドは、ベンチマークと乖離がないほど評価が高くなります。具体的には、基準価額の騰落率と、ベンチマーク騰落率を比較し、その差を乖離度として評価します。一方、アクティブファンドはベンチマークを上回る運用を目指していますから、ベンチマークよりも騰落率が大きくなっていなければなりません。
当記事で紹介しているインデックス運用の10ファンドは、ベンチマークから大きく乖離しているファンドはないものの、ベンチマーク騰落率をやや下回るものが多いです。また、唯一のアクティブ運用であるセゾン・資産形成の達人ファンドの騰落率は、ベンチマーク騰落率を大きく下回っています。
取引のしやすさランキング
インターネット証券大手5社で取り扱っているかのランキングとなります。インターネット証券大手5社は、SBI証券、楽天証券、松井証券、SMBC日興証券、マネックス証券としています。
11ファンド中7ファンドが大手5社のすべてで取引が可能です。つみたて全世界株式はマネックス証券でだけ取り扱いがありません。一方、セゾン・資産形成の達人ファンドはSBI証券と松井証券でだけ取り扱いがあり、新発行のSmart-i Select 全世界株式インデックスおよびSmart-i Select 全世界株式インデックス(除く日本)は、証券会社では取り扱っておらず、りそな銀行でしか売買できません。
当サイトの評価ランキング
当サイトでは、すべての投資信託において、純資産総額、資産の流入出、トータルリターン、信託報酬、ベンチマークとの乖離度、シャープレシオ、標準偏差の7項目を1~7段階(1が最も悪く7が最も良い)で評価値をつけています。7項目の合計値の順位も確認していきます。ただし、今回の対象となる10ファンドは、設定から3年が経過していないものが多く、3年間の経過で評価をつけているシャープレシオや標準偏差の評価値は合計値から除いています。
トップは合計36のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)になりました。ただし、2位の三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンドとは2ポイント、同率3位の野村つみたて外国株投信とeMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)とは3ポイントの差しかありません。
評価値を細分化して見ていくと、純資産総額および資産の流入出の状況がランキングの決め手となっています。一方で、シャープレシオや標準偏差などのリスク数値はほとんど差がありません。これはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスの優れた分散性を表していると言えるのではないでしょうか。
総合ランキング
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスをベンチマークに採用しているため、どれを選んでも一定以上のリターンと分散性が保証されています。一方で、設定からの期間が短いファンドが多く、純資産総額などのファンドの安定性や信託報酬などの潜在的なリスクはしっかりと吟味すべき項目になります。全世界の株式指数をベンチマークとしているため、標準偏差は潜在的にそこまで大きくなりません。反対に、コスト面でのリスクはファンドごとに特徴があるため、順位付けの大きなポイントになるでしょう。
純資産総額は100億円を超えていれば問題ないでしょう。資産の流入状況や騰落率は将来性を表す指標でもあるため、重要な指標となります。数字の良いものは加点され、悪いものは減点されます。
信託報酬は0.1%台が5ファンド、0.2%台が3ファンド、0.5%台が3ファンドとなっています。0.1%台との5ファンドは高評価としますが、0.2%の3ファンドも減点にはなりません。
取引のしやすさは個人投資家を対象としたランキングにおいて重要です。11ファンド中8ファンドは取引しやすい(取り扱っている金融機関・証券会社が多い)傾向にあります。残りの3ファンド中1ファンドは一定範囲の証券会社や金融機関で取り扱いがありますが、2ファンドについては取り扱いがかなり限局されています。当サイトの評価は参考程度の指標となります。
5位
セゾン・資産形成の達人ファンド:セゾン投信株式会社
純資産総額のランキングで3位になった以外はどの項目にもランクインしていません。ランクインはしていないもののいずれも上位に食い込んでおり、最終的にベスト5に入りました。アクティブ運用にもかかわらず、信託報酬は0.5%台に抑えられており、アクティブファンドの入門としては魅力的な商品です。設定からの期間も長く、安定感こそありますが、収益性やベンチマークとの乖離度が大きく足を引っ張りました。
4位
野村・つみたて外国株投信:野村アセットマネジメント株式会社
トータルリターンにおいて、3年間の平均年率が僅差ながらもトップに立っています。信託報酬は0.2090%でギリギリ0.1%を割らなかったため、下位順位となっていますが、それ以外の項目では総じて平均以上の数字となっています。欠点のない商品ですが、トップ3が別格だったため、結果的に4位という位置に落ち着きました。
3位
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本):三菱UFJ国際投信株式会社
あらゆる点でトップに及びませんでした。のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)との一番の違いは、その名前のとおり、投資対象の地域・国に日本が入って「いない」か「いる」かというところです。その差は正直に言って誤差程度のものであるため、2ファンド間の成績にそこまで大きな差は生まれませんでした。ただし、2ファンドとも基本的には日本人の投資家を対象とした商品ですから、日本が入っている商品の方が人気が高かったということでしょう。
2位
三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド:三井住友DSアセットマネジメント株式会社
ランキングの常連です。トータルリターンは当ファンドに軍配が上がりましたが、基準価額の騰落率、純資産総額、信託報酬、評価の総合値と、多くの項目で1位のファンドに劣ります。信託報酬は0.2%台ですが、リターンがいいため、減点するほどのものではなく、総合的に悪いところがないファンドですが、1位が強すぎた結果2位に甘んじました。
1位
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):三菱UFJ国際投信株式会社
トータルリターン以外はすべての項目において上位です。特に、「将来性」が強く感じられます。間違いなくつみたてNISAを代表する商品です。設定からの期間は浅いため、課題である収益性がどう変化していくかは注目していきたいところです。3位と1位どちらにするかという問題は、個人のポートフォリオに応じて決定すべきでしょう。
以上、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスをベンチマークに採用するつみたてNISA対応の商品の独自のランキングでした。投資信託は日々変動していくものです。経過に応じて評価も変動していきます。今回のランキングも定期的に更新していきたいと思います。