労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書:概算保険料

 

 

労働保険の概算保険料を申告および納付をするときに作成する書類が、「労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書(以下、概算保険料申告書)」です。

労働保険の適用事業の事業主は、保険年度(4月~翌3月)ごとに、労働保険料の額などを記載した概算保険料申告書に添えて、その保険年度の6月1日から起算して40日以内(7月10日まで)、または労働保険の保険関係が成立した日からから起算して50日以内に労働保険料を納付しなければなりません。

井上とまと

継続事業(事業の期間が定まっていない事業)の労働保険の納付期間は上記のとおりですが、有期事業(事業の期間が定まっている事業)の労働保険の納付期間は、労働保険の保険関係が成立した日からから起算して20日以内となっています。

概算保険料申告書は、所轄の都道府県労働局労働保険特別会計歳入徴収官(以下、歳入徴収官)に提出しなければなりません。また、労働保険料などの徴収金の納付は、納付書によって行われます。

 

概算保険料申告書の作成手順

 

それでは、概算保険料申告書を一緒に作成していきましょう。

今回は、「さつま木材 株式会社」の代表取締役である「焔薪(ほむらまき)」さんをモデルに進めていきます。

 

 

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申告書の基本情報

①申告書の種別は、「概算、増加概算、確定、一般拠出金」のいずれか該当するものに〇を付けます。今回は概算保険料申告書であるため、「概算」に〇を付けます。

増加概算保険料
増加概算保険料を納付する場合は、「増加概算」に〇を付けます。保険料算定基礎額の見込額が増加した場合において、増加後の保険料算定基礎額の見込額が増加前の保険料算定基礎額の見込額の100分の200を超え、かつ増加後の保険料算定基礎額の見込額に基づいて算定した概算保険料とすでに納付した概算保険料の額との差額が13万円以上であるときは、その日から起算して30日以内にその差額を、申告書に添えて納付しなければなりません。

②右上の日にちを記入するところには、概算保険料申告書を提出する日を記入します。

③労働保険番号は、事業所に振り出されている番号を記入します。

労働保険番号
事業所(会社)が労働保険に加入したときに、労働基準監督署から振り出されるものです。番号は保険関係成立届で確認できますが、インターネット検索などでは確認できません。

④常時使用労働者数および雇用保険被保険者数は、いずれもそのまま記入します。常時使用労働者数は使用者と雇用関係にあるすべての労働者の数を記入し、雇用保険被保険者数は雇用保険の被保険者(一般被保険者および高年齢被保険者)の数を記入します。

⑤あて先は、概算保険料申告書を提出する歳入徴収官の所在地を記入します。

⑥「__労働保険特別会計歳入徴収官」には、事業所の所在地を所轄する都道府県労働局労働保険特別会計歳入徴収官の名称を記入します。「さつま木材 株式会社」は、高知県高知市にありますから、ここでは「高知労働局」と記入します。

 

概算・増加概算保険料算定内訳

*概算保険料申告書である場合は、確定保険料算定内訳欄は記入しません。

①算定期間は、そのまま記入します。当該保険年度以前から事業を継続している場合は、「4月1日~3月31日」と記入し、当該年度の途中から事業を開始した場合は、「事業の開始年月日~3月31日」と記入します。

②労働保険料は、【保険料算定基礎額の見込額】と【保険料率】は記入せず、【概算・増加概算保険料額】は③と④の【概算・増加概算保険料額】を足した額を記入します。

③労災保険分は、【保険料算定基礎額の見込額】にすべての労働者の賃金総額を記入し、【保険料率】に労災保険率表の中から当該事業の労災保険率に当てはまる数字を記入し、【概算・増加概算保険料額】に【保険料算定基礎額の見込額】を【保険料率】で乗じた額を記入します。さつま木材 株式会社は、木材又は既製品製造業に該当するため、【保険料率】は「14」と記入します。

④雇用保険分は、【保険料算定基礎額の見込額】に(すべての労働者のうち)雇用保険の被保険者の賃金総額を記入し、【保険料率】に雇用保険率の中から当該事業の雇用保険率に当てはまる数字を記入し、【概算・増加概算保険料額】に【保険料算定基礎額の見込額】を【保険料率】で乗じた額を記入します。さつま木材 株式会社は、一般の事業に該当するため、【保険料率】は「9」と記入します。

雇用保険率
雇用保険率は年度ごとに変動します。ただし、区分は労災保険とは異なり、「一般の事業、農林水産業・清酒製造業、建設業」の3つとなります。令和元年の雇用保険率は、一般の事業が1000分の9、農林水産業・清酒製造業が1000分の11、建設業が1000分の12となります。

⑤延納の申請納付枚数は、概算保険料を延納(分割払い)する場合に、その回数を記入します。概算保険料の延納は最大で3回とすることができます。延納しない場合は1回払いとなるため、「1」と記入します。

 

納付額などの情報

①個人番号は、そのまま記入します。

個人番号(マイナンバー)
個人の識別番号として、日本において行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づき、各市区町村から住民に指定される12桁の番号です。

②期間納付額(全期又は第1期)は、【概算保険料額】、【労働保険料充当額】、【不足額】、【今期労働保険料】、【一般拠出金充当額】、【一般拠出金額】、【今期納付額】を記入します。概算保険料申告書の場合は、【概算保険料額】、【今期労働保険料】、【今期納付額】を記入します。【概算保険料額】は、概算・増加概算保険料算定内訳の②労働保険料の【概算・増加概算保険料額】の数字を記入し、【今期労働保険料】および【今期納付額】は基本的に【概算・増加概算保険料額】と同じ数字になります。

③期間納付額(第2期)、③期間納付額(第3期)は、【概算保険料額】、【労働保険料充当額】、【第2期・第3期納付額】を記入します。

⑤事業又は作業の種類は、労災保険率表の中から該当する事業の種類を記入します。

⑥保険関係成立年月日は、そのまま記入します。労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険の保険関係成立年月日が異なる場合は、原則として最初に成立した方に日にちを記入します。

 

事業および事業主の情報

①加入している労働保険は、「イ:労災保険、ロ:雇用保険」のうち加入しているものすべてに〇を付けます。

②特掲事業は「イ:該当する、ロ:該当しない」のいずれかに〇を付けます。

雇用保険の特掲事業
雇用保険における失業等給付の負担の均衡化を図るため、短期雇用特例被保険者が多く雇用される事業については、雇用保険率を一般の事業と比して高くしています。そのような事業を特掲事業といい、①土地の耕作もしくは開墾または植物の栽植、栽培、採取もしくは伐採の事業その他農林の事業(園芸サービスの事業を除く)、②動物の飼育または水産動植物の採捕もしくは養殖の事業その他畜産、養蚕または水産の事業(牛馬の育成、養鶏、酪農または養豚の事業および内水面養殖の事業を除く)、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体またはその準備の事業、清酒の製造の事業がこれに該当します。

③事業の情報は、事業の所在地と名称を記入します。

④事業主の情報は、事業主の郵便番号、電話番号、住所、名称、氏名を記入し、氏名の横に印鑑をします。

⑤社会保険労務士記載欄は、本申請書などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。

 

領収済通知書A

①取扱庁名は、事業所の所在地を所轄する都道府県労働局労働保険特別会計歳入徴収官の名称を記入します。「さつま木材 株式会社」は、高知県高知市にありますから、ここでは「高知労働局」と記入します。

②労働保険番号は、事業所に振り出されている番号を記入します。

③納付の目的は、「1:令和▢▢年度概算▢期、2:▢、3:令和▢▢年度確定」のいずれか該当する▢に数字を記入します。概算保険料の場合は「1:令和▢▢年度概算▢期」に、増加概算保険料の場合は「2:▢」に、確定保険料の場合は「3:令和▢▢年度確定」に数字を記入します。今回は、概算保険料申告書ですから、「1:令和▢▢年度概算▢期」に、保険年度の数字と納期数を記入します。

④住所・氏名には、事業所の住所、事業の名称、事業主の職氏名を記入します。

 

領収済通知書B

①労働保険料は、今期納付する労働保険料額を記入します。

②一般拠出金は、一般拠出金の額を記入します。

③納付額は、①と②を足した額を記入します。

井上とまと

①~③いずれにおいても、金額の左端の▢に¥を記入します。

④あて先は、労働保険料申告書を提出する歳入徴収官の所在地と、歳入徴収官の名称を記入します。

 


 

以上で、概算保険料申告書の作成が終わりました。

概算保険料申告書は記入内容が煩雑です。概算・増加概算保険料額などは、実際の納付額に直結するため、間違わないように記入しましょう。保険料算定基礎額の見込額が、最大の肝となります。保険料算定基礎額の見込額は、厚生労働省のホームページにある「算定基礎賃金集計表」などを活用して計算しましょう。

また、概算保険料として納付すべき一般保険料(=労働保険料)の額は、その保険年度に使用するすべての労働者に係る賃金総額(=保険料算定基礎額)の見込額が、直前の保険年度の賃金総額の100分の50以上100分の200以下である場合は、直前の保険年度の賃金総額を見込額として記入することができます。

つまり、労働者数や労働者に支払う賃金の同額が、直前の保険年度の半分以下減ったり、2倍以上に増えたりしない限り、細かな計算はせずに、直前の保険年度の賃金総額を基礎として一般保険料を算定し、概算保険料を納付すればいいということです。

 

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