健康保険 療養費支給申請書(立替払等)
健康保険の被保険者が療養費を請求するときに作成する書類が、「健康保険 療養費支給申請書(立替払等)(以下、療養費支給申請書(立替払等))」です。
健康保険における医療給付には、療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費(家族療養費)があります。
にも、訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)、高額療養費、高額介護合算療養費があります。この後の話をわかりやすくするため、今回はを割愛します。
医療給付のうち、療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費については、「保険医療機関」で診療、薬剤の支給、手術、食事の提供などを受けることによって、特別な手続きを要することなく保険が適用されます。一方、療養費については、被保険者が療養費支給申請書を提出することで保険が適用されます。
療養費は健康保険法第87条に、「保険医療機関以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手術を受けた場合において、保険者がやむを得ないと認めるとき」に支給することができると規定されています。
保険者がやむを得ないと認めるときとは、次のような場合です。
- 保険医療機関がない場合:無医村や山間部などで諸般の状況により療養の給付を受けることが困難と認められるとき。
- 事業主が資格取得届の提出を怠った場合:被保険者の身分を証明し得ない状態にあるとき。
- 準医療行為:柔道整復師、はり・きゅうの施術を受けたとき(医師の同意があるときに限る)。
- 特殊な治療用装具:コルセット、義眼、義肢などを購入したとき。
- 生血代:保存血は除く。
- 海外において療養を受けた場合
このうち、①②③⑤⑥は療養費支給申請書(立替払等)を提出することになります。
療養費支給申請書(立替払等)の作成手順
それでは、療養費支給申請書(立替払等)を一緒に作成していきましょう。
今回は、健康保険の被保険者である「金剛石光(こんごうせきひかる)」さんをモデルに進めていきます。
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被保険者情報
①被保険者証の記号・番号は、被保険者証に記載されている記号(事業所整理記号)と番号(被保険者整理番号)を記入します。数字は左詰めで記入します。
事業所整理記号 「数字2桁のカタカナまたは英数4桁以内」や「漢字+ひらがな」など、自治体ごとに異なる形式で表されます。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合は、事業所整理記号は健康保険証に記載された「記号」と変換可能 です。たとえば、「渋2いろは」という厚生年金保険の事業所整理記号は、全国健康保険協会(協会けんぽ)では「64010203」という数字になります。 |
被保険者整理番号 社会保険に加入したときに、会社内で1番から順に従業員に割り当てる番号です。新入社員など、新しく健康保険証を発行する場合は、直前に社会保険に加入した従業員の次の番号を採番します。従業員に被扶養者がいる場合は、従業員と同じ番号を割り当てます。 |
②生年月日は、左の▢に元号を、その後の6つの▢に年月日を記入します。元号は「1:昭和、2:平成、3:令和」のいずれかの番号を記入します。
③氏名は、漢字とフリガナで記入します。
④住所・電話番号は、郵便番号と電話番号を数字で記入し(左詰め)、住所を都道府県から記入します。
振込先指定口座
①金融機関名称は、そのまま記入します。
②預金種別は、「1:普通、2:当座、3:別段、4:通知」のいずれかの番号を記入します。
③口座番号は、そのまま記入します(左詰め)。
④口座名義は、フリガナで記入します。姓と名の間は1マス空け、゛濁点や小文字は1マスに記入します。
⑤口座名義の区分は、「1:被保険者、2:代理人」のいずれかの番号を記入します。「2:代理人」と記入した場合は、後述の「受取代理人の欄」に情報を記入します。
受取代理人の欄および欄外下
①受取代理人の欄は、「口座名義の区分」を「2:代理人」とした場合に、その者の氏名や生年月日、住所などを記入します。
被保険者の傷病が重い場合、被保険者ではなく、代理人に療養費が支給された方がいい場合もあります。っそのようなときは、「口座名義の区分」を「2:代理人」とし、当該欄にその代理人の身分を証明します。
②個人番号(マイナンバー)記入欄は、被保険者証の記号・番号が不明な場合に記入します。被保険者証の記号・番号が記入されているときは、記入しない方がいいです。
③社会保険労務士記載欄は、本申請書などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。
申請内容A(裏面)
①被保険者氏名は、そのまま記入します。
②受診者は、「1:被保険者、2:家族(被扶養者)」のいずれかの番号を記入します。「2:家族(被扶養者)」と記入した場合は、その下欄に氏名や生年月日も記入します。
③氏名、④生年月日は、②に「2:家族(被扶養者)」と記入した場合に、その者の氏名と生年月日を記入します。生年月日は「被保険者の生年月日」の規則を参考にして記入します。
⑤傷病名は、そのまま記入します。
⑥発病または負傷年月日は、左の▢に元号を、その後の6つの▢に年月日を記入します。元号は「1:平成、2:令和」のいずれかの番号を記入します。疾病の場合は診断された年月日、負傷の場合はその発生年月日を記入します。
⑦発病の原因および経過は、「1:病気、2:ケガ」のいずれかの番号を記入します。「1:病気」の場合は後に続く空欄に「原因および経過」を記入し、「2:ケガ」の場合は負傷原因届を添付します。
申請内容B(裏面)
診療を受けた医療機関等の①【名称】、②【所在地】、③【診療した医師等の氏名】は、いずれもそのまま記入します。
④診療を受けた期間は、診療を受け始めた(初診日の)年月日と診療を受け終えた(最終診療日の)年月日を記入します。「発病または負傷年月日」の規則を参考にして記入します。
⑤日数は、④の期間の日数を記入します。
⑥上記の期間に入院していた場合は、入院した年月日と退院した年月日を記入します。「発病または負傷年月日」の規則を参考にして記入します。
⑦日数は、⑥の期間の日数を記入します。
申請内容C(裏面)
①療養に要した費用の額は、そのまま記入します。明細書などに記載されている金額(税込)となります。
②診療の内容は、明細書などに記載されている項目を列挙します。どんな疾病または負傷に対して、具体的にどんな診療を受けたかを記入します。
③療養費の支給申請の理由は、「1:入社して間もなく、被保険者証が届いていなかったため、2:緊急やむを得ず受診し、被保険者証をもっていなかったため、3:誤って他の保険者の被保険者証を使用したため、9:その他」のいずれかの番号を記入します。「9:その他」を記入した場合には、その具体的な理由も記入します。
以上で、療養費支給申請書(立替払等)の作成が終わりました。
療養費は、療養にかかった費用(費用全体の10割)を一度全額支払い、療養費の支給申請後に自己負担分(費用全体の1~3割)を除いた費用が現金で戻ってくるというかたち(償還払い)をとっています。そのため、申請しない限り保険負担分(費用全体の7~9割)は戻ってきません。
また、療養費の支給申請には、必ず診療報酬明細書(レセプト)を添付しなければなりません。診療報酬明細書(レセプト)絶対になくさないようにしましょう。