労働者災害補償保険 遺族補償一時金支給請求書
労働者災害補償保険(以下、労災保険)の遺族(補償)一時金を受けるときに作成する書類が、「労働者災害補償保険 遺族補償一時金支給請求書(以下、遺族補償一時金支給請求書)」です。
労働災害に係る負傷や疾病により、被災労働者が死亡した場合に、一定の要件を満たした遺族は労災保険によって(金銭的に)支援されます。これが労災保険における「遺族(補償)給付」です。このうち、「遺族(補償)年金を受けることができる遺族がおらず、かつ死亡した被災労働者と関係のある親族などがいた場合、その親族などは「遺族(補償)一時金」を受給することができます。
遺族(補償)年金では、生計維持関係にあることや、年齢または障害の有無などの受給要件が設けられていました。死亡した被災労働者に関係のある者がいるものの、遺族(補償)年金の受給要件に該当するものがいない場合に、遺族(補償)一時金が支給されます。
遺族(補償)年金については、以前の記事で説明しました。
労働災害が業務災害の場合は「遺族補償一時金」となり、通勤災害の場合は「遺族一時金」となります。
遺族(補償)一時金を受けることができる者は、次のような親族などです。
順位 | 親族など | 要件 |
1 | 配偶者 | なし |
2 | 子、父母、孫、祖父母 | 死亡した被災労働者と生計維持関係にあったこと |
3 | 子、父母、孫、祖父母 | なし |
4 | 兄弟姉妹 | なし |
遺族(補償)一時金は、前記の表の順位の高い者から順に支給され、一の順位の者に支給されると、それ以外の順位の者には支給されません。
遺族補償一時金支給請求書の作成手順
それでは、遺族補償一時金支給請求書を一緒に作成していきましょう。
今回は、「Bug’s Style 株式会社」の労働者である「蝶野蜚敏(ちょうのとびとし)」さんの親族である「蝶野吸子(ちょうのすいこ)」さんをモデルに進めていきます。
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被災労働者の基本情報
①労働保険番号は、事業所に振り出されている事業所番号を記入します。
労働保険番号 事業所(会社)が労働保険に加入したときに、労働基準監督署から振り出されるものです。番号は保険関係成立届で確認できますが、インターネット検索などでは確認できません。 |
ちなみに、その下欄の「年金証書の番号」は、労災保険から年金を受けている場合に、その番号記入します。
②労働者の氏名は、漢字とフリガナを記入し、「男・女」のいずれかの性別に〇を付けます。
③労働者の生年月日、④職種、⑤所属事業所名称・所在地は、いずれもそのまま記入します。
⑥負傷又は発病年月日は、労働災害が発生した年月日および時刻を記入します。時刻は12時間表記です。
⑦死亡年月日は、労働災害に係る負傷や疾病により死亡した日を記入します。即死の場合は⑥と同じ年月日となります。
災害の原因及び発生状況など
①災害の原因及び発生状況は、労働災害と認定されるかどうかの1つの判断材料になりますので、できるだけ詳細に記入します。特に、労働災害の発生場所、発生時の作業内容、発生時の環境、不安全な状況および有害な状態、労働災害の内容が明確になるように意識して記入します。
②平均賃金は、「平均賃金算定内訳」などを用いて、被災労働者の平均賃金を記入します。
平均賃金は、遺族補償一時金の額の基準となる給付基礎日額の計算に用いられます。
③特別賞与の総額(年間)は、前述の「傷病又は発病年月日」以前1年間の特別賞与の総額を記入します。
事業所の証明
①左上の日にちを記入するところには、前述の情報が正確であることを、事業所が証明した日を記入します。
②事業所の情報は、事業の名称、電話番号、事業所の所在地(郵便番号)、事業主の氏名を記入し、印鑑を押します。
請求人・申請人の情報
①氏名、②生年月日、③住所、④死亡労働者との関係は、いずれもそのまま記入します。氏名と住所にはフリガナも記入します。
*請求人の代表者を選任しないときはその理由も記入します。代表者を選任する余地がない場合も記入しなくて構いません。
遺族(補償)一時金の受給権者 遺族(補償)一時金において、子、父母、祖父母、兄弟姉妹が請求者となる場合、遺族(補償)一時金を受ける権利を有する者が複数存在することになる場合があります。その場合、請求者の代表者を選出し、その代表者に遺族(補償)一時金が支給されることになります。そのため、遺族(補償)一時金の請求時に、代表者を選出しておく必要があります。ただし、遺族(補償)一時金を受ける権利を有する者が妻や夫の場合は、請求者が複数になることはありません。 |
⑥送付する書類その他の資料名は、被災労働者が死亡したことを証明する死亡診断書や、請求人・申請人と死亡した被災労働者との関係を証明する戸籍謄本などを添付する場合に、その資料名を記入します。
欄外下
①には、本請求書が何の請求書であるかを示すために、該当する項目に〇を付けます。
①に〇を付けたものと、表題で〇を付けたものとに、ずれがないことを確認してください。
②左上の日にちを記入するところには、遺族補償一時金支給請求書を提出する日を記入します。
③「___労働基準監督署長 殿」には、事業所がある地域を管轄する労働基準監督署(長)の名称を記入します。「Bug’s Style 株式会社」は、愛知県名古屋市天白区にありますから、ここでは「名古屋東」と記入します。
④請求人・申請人の情報は、郵便番号、電話番号、住所、氏名を漏れなく記入し、印鑑を押します。
⑤振り込みを希望する金融機関の情報は、前払一時金の振り込みを希望する金融機関の名称と、本店・支店名を記入します。
⑥預金の種類及び口座番号は、「普通・当座」のいずれかの番号に〇を付け、口座番号と名義人を記入します。
以上で、遺族補償一時金支給請求書の作成が終わりました。
「遺族補償一時金支給請求書(様式第15号)」は、業務災害における遺族補償一時金を受けるときに作成する書類です。一方、通勤災害における遺族一時金を受ける場合には、「遺族一時金支給請求書(様式第16号の9)」を作成します。
遺族(補償)一時金の額は、一律で給付基礎日額の1,000日分とされています。ただし、遺族(補償)一時金を受けるまでに、遺族(補償)年金を受けていた場合は、それまでに受け取った額を給付基礎日額の日数に修正した日数分を1,000日から引いた日数分が支給されます。
たとえば、死亡した被災労働者と生計を維持していた遺族が17歳の子だけで、その他の順位者がいない場合、遺族(子)は18歳に達する日以後の最初の3月31日までしか遺族(補償)年金を受けることができません。このとき、遺族(子)が遺族(補償)年金を受け始めてから18歳に達する日以後の最初の3月31日までの期間が200日だった場合、遺族(子)は18歳に達する日以後の最初の3月31日の翌日以降に請求することで、1,000日-200日=800日分の遺族(補償)一時金を受けることができます。