労働者災害補償保険 遺族補償年金支給請求書

 

 

労働者災害補償保険(以下、労災保険)の遺族(補償)年金を受けるときに作成する書類が、「労働者災害補償保険 遺族補償年金支給請求書(以下、遺族補償年金支給請求書)」です。

労働災害に係る負傷や疾病により、被災労働者が死亡した場合に、一定の要件を満たした遺族は労災保険によって(金銭的に)支援されます。これが労災保険における「遺族(補償)給付」です。このうち、死亡した被災労働者の収入によって生計を維持していた者がいた場合には、「遺族(補償)年金」を受給することになります。

井上とまと

労働災害が業務災害の場合は「遺族補償年金」となり、通勤災害の場合は「遺族年金」となります。

遺族(補償)年金における一定の要件を満たした遺族とは、次のような遺族です。

順位遺族要件
1妻・夫妻:要件なし 夫:60歳以上または障害の状態にあること
218歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあることまたは障害の状態にあること
3父母60歳以上または障害の状態にあること
418歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあることまたは障害の状態にあること
5祖父母60歳以上または障害の状態にあること
6兄弟姉妹18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること、60歳以上または障害の状態にあること
755歳以上60歳未満の者で、障害の状態にないこと
8父母55歳以上60歳未満の者で、障害の状態にないこと
9祖父母55歳以上60歳未満の者で、障害の状態にないこと
10兄弟姉妹55歳以上60歳未満の者で、障害の状態にないこと

*いずれも被災労働者の収入によって生計を維持していた者

遺族(補償)年金は、前記の表の順位の高い者から順に支給され、一の順位の者に支給されると、それ以外の順位の者には支給されません。また、遺族(補償)年金は、前記の表の遺族の人数によって、支給額が異なります。

 

遺族補償年金支給請求書の作成手順

 

それでは、遺族補償年金支給請求書を一緒に作成していきましょう。

今回は、「Bug’s Style 株式会社」の労働者である「蝶野蜚敏(ちょうのとびとし)」さんをモデルに進めていきます。

 

 

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被災労働者の基本情報

①労働保険番号は、事業所に振り出されている事業所番号を記入します。

労働保険番号
事業所(会社)が労働保険に加入したときに、労働基準監督署から振り出されるものです。番号は保険関係成立届で確認できますが、インターネット検索などでは確認できません。
井上とまと

ちなみに、その下欄の「年金証書の番号」は、労災保険から年金を受けている場合に、その番号記入します。

②労働者の氏名は、漢字とフリガナを記入し、「男・女」のいずれかの性別に〇を付けます。

③労働者の生年月日④職種⑤所属事業所名称・所在地は、いずれもそのまま記入します。

⑥負傷又は発病年月日は、労働災害が発生した年月日および時刻を記入します。時刻は12時間表記です。

⑦死亡年月日は、労働災害に係る負傷や疾病により死亡した日を記入します。即死の場合は⑥と同じ年月日となります。

災害の原因及び発生状況など

①災害の原因及び発生状況は、労働災害と認定されるかどうかの1つの判断材料になりますので、できるだけ詳細に記入します。特に、労働災害の発生場所、発生時の作業内容、発生時の環境、不安全な状況および有害な状態、労働災害の内容が明確になるように意識して記入します。

②平均賃金は、「平均賃金算定内訳」などを用いて、被災労働者の平均賃金を記入します。

井上とまと

平均賃金は、遺族(補償)年金の額の基準となる給付基礎日額の計算に用いられます。

③特別賞与の総額(年間)は、前述の「傷病又は発病年月日」以前1年間の特別賞与の総額を記入します。

厚生年金保険等の受給関係

被災労働者が厚生年金の受給者である場合に記入します。遺族(補償)年金を受ける遺族が、厚生年金の受給者でもある場合、併給調整(厚生年金の額を減額する調整)が行われます。

 

事業所の証明

①左上の日にちを記入するところには、前述の情報が正確であることを、事業所が証明した日を記入します。

②事業所の情報は、事業の名称、電話番号、事業所の所在地(郵便番号)、事業主の氏名を記入し、印鑑を押します。

 

請求人・申請人の情報

①氏名②生年月日③住所④死亡労働者との関係は、いずれもそのまま記入します。氏名と住所にはフリガナも記入します。

⑤障害の有無は、「ある、ない」のいずれかに〇を付けます。

*請求人の代表者を選任しないときはその理由も記入します。代表者を選任する余地がない場合も記入しなくて構いません。

遺族(補償)年金の受給権者
遺族(補償)年金において、子、父母、祖父母、兄弟姉妹が請求者となる場合、遺族(補償)年金を受ける権利を有する者が複数存在することになる場合があります。その場合、請求者の代表者を選出し、その代表者に遺族(補償)年金が支給されることになります。そのため、遺族(補償)年金の請求時に、代表者を選出しておく必要があります。ただし、遺族(補償)年金を受ける権利を有する者が妻や夫の場合は、請求者が複数になることはありません。

 

その他の遺族の情報

遺族(補償)年金を受ける権利を有する者のうち、請求人よりも前述の表順の低い者の情報を記入します。

①氏名②生年月日③住所④死亡労働者との関係は、いずれもそのまま記入します。氏名と住所にはフリガナも記入します。

⑤障害の有無は、「ある、ない」のいずれかに〇を付けます。

⑥請求人と生計を維持しているかは、「いる、いない」のいずれかに〇を付けます。

 

金融機関の情報

*年金の払渡しを受けることを希望する金融機関又は郵便局は、金融機関または郵便局いずれかの情報を記入します。今回は、金融機関で年金の払渡しを受けることを希望します。

給付の内容
遺族(補償)給付は、現金が支給されます。しかし、現金は手渡しされるのではなく、金融機関への振込というかたちで行われます。そのため、振込先の金融機関の情報も記入しておく必要があります。

①名称は、年金の払渡しを受けることを希望する金融機関の名称と本店・支店名を記入します。

②預金通帳の記号番号は、「普通・当座」のいずれかの預金方式に〇を付け、口座番号を記入します。

 

欄外下

には、本請求書が何の請求書であるかを示すために、該当する項目に〇を付けます。

井上とまと

①で〇を付けたものと、表題で〇を付けたものとに、ずれがないことを確認してください。

②左上の日にちを記入するところには、遺族補償年金支給請求書を提出する日を記入します。

③「___労働基準監督署長 殿」には、事業所がある地域を管轄する労働基準監督署(長)の名称を記入します。「Bug’s Style 株式会社」は、愛知県名古屋市天白区にありますから、ここでは「名古屋東」と記入します。

④請求人・申請人の情報は、郵便番号、電話番号、住所、氏名を漏れなく記入し、印鑑を押します。また、個人番号(マイナンバー)も記入します。

⑤振り込みを希望する金融機関の情報は、前述の「年金の払渡しを受けることを希望する金融機関又は郵便局」の情報とずれがないように注意して記入します。

 


 

以上で、遺族補償年金支給請求書の作成が終わりました。

「遺族補償年金支給請求書(様式第12号)」は、業務災害における遺族補償年金を受けるときに作成する書類です。一方、通勤災害における遺族年金を受ける場合には、「遺族年金支給請求書(様式第16号の8)」を作成します。

また、遺族(補償)年金における一定の要件を満たした遺族のうち、次の者は「若年支給停止者」と呼ばれ、60歳に達するまでは遺族(補償)年金の支給が停止されます。

順位遺族要件
755歳以上60歳未満の者で、障害の状態にないこと
8父母55歳以上60歳未満の者で、障害の状態にないこと
9祖父母55歳以上60歳未満の者で、障害の状態にないこと
10兄弟姉妹55歳以上60歳未満の者で、障害の状態にないこと

 

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