療養給付たる療養の給付請求書

 

 

労働者災害補償保険(以下、労災保険)の療養給付を受けるときに作成する書類が、「療養給付たる療養の給付請求書(以下、療養の給付請求書)」です。

労働災害(通勤災害)と認定された場合、その負傷や疾病に係る治療は、労災保険によって補償されます。これが労災保険における「療養給付」です。

井上とまと

労災保険において、業務災害によって治療を受ける場合は療養補償給付、通勤災害によって治療を受ける場合は療養給付と、給付の名称が異なります。

療養給付には、現物給付である「療養の給付」と、現金給付である「療養の費用の支給」があります。しかし、どちらか一方を選択できるというわけではなく、やむを得ない場合を除いて、原則として「療養の給付」を受けることとされています。

療養の給付は、以下のような医療機関(指定病院等)で受けることができます。

  • 社会復帰促進等事業として設置された病院または診療所
  • 都道府県労働局長の指定する病院または診療所、薬局、訪問看護事業者
井上とまと

20床以上の病床を有する医療機関が病院で、20床未満の病床を有するまたは病床を有しない医療機関が診療所(クリニック)です 。

療養の給付を受けようとする者は、療養の給付請求書を、療養の給付を受けようとする病院または診療所、薬局、訪問看護事業者(指定病院等)を経由して、事業所がある地域を管轄する労働基準監督署に提出しなければなりません。

 

療養の給付請求書の作成手順

 

それでは、療養の給付請求書を一緒に作成していきましょう。

今回は、「Bug’s Style 株式会社」の労働者である「蝶野蜚敏(ちょうのとびとし)」さんをモデルに進めていきます。

 

 

事務所やデスク周りに必要なものは楽天市場 でお得にそろえましょう!



 

労働保険番号

①労働保険番号は、事業所に振り出されている事業所番号を記入します。

労働保険番所
事業所(会社)が労働保険に加入したときに、労働基準監督署から振り出されるものです。番号は保険関係成立届で確認できますが、インターネット検索などでは確認できません。
井上とまと

労働保険番号は、多くの労働保険関連の手続きで必要になります。

 

労働者の情報A

①性別は、「1:男、3:女」のいずれかの番号を記入します。

②労働者の生年月日は、元号を「1:明治、3:大正、5:昭和、7平成、9:令和」のいずれかの番号を左端の▢に記入し、年月日を続く▢に記入します。年月日が1桁の場合には、0⃣を記入して続けます。昭和50年1月23日生まれの場合は、「5⃣5⃣0⃣0⃣1⃣2⃣3⃣」と記入します。

③負傷又は発病年月日は、②と同様の規則で記入します。

④氏名は、カタカナと漢字のそれぞれを記入します。カタカナ表記は、欄外右上の「標準字体」の規則に従って記入します。

井上とまと

゛濁点も1マスに記入し、苗字と名前の間は1マス開けます。

 

労働者の情報B

①住所は、郵便番号と住所を記入します。住所にはフリガナも記入します。

②職種は、被災労働者の職種を記入します。

③第三者行為災害は、「該当する、該当しない」のいずれかに〇を付けます。

*健康保険日雇特例被保険者手帳の記号及び番号は、被災労働者が健康保険の日雇特例被保険者である場合に記入します。

 

指定病院等の情報

①名称(電話番号)②所在地(郵便番号)は、指定病院等の情報をそのまま記入します。

③傷病の部位及び状態は、指定病院等に診断された負傷または疾病の診断名を記入します。

 

事業所の情報

①欄内の日にちを記入するところには、前述の情報が正確であることを、事業所が証明した日を記入します。

②事業の情報は、事業の名称、電話番号、所在地(郵便番号)、事業主の氏名を記入し、証として印鑑を押します。

 

欄外下

①右上の日にちを記入するところには、療養の給付請求書を提出する日を記入します。

②左端の「___労働基準監督署長 殿」には、事業所がある地域を管轄する労働基準監督署(長)の名称を記入します。「Bug’s Style 株式会社」は、愛知県名古屋市天白区にありますから、ここでは「名古屋東」と記入します。

③経由した医療機関名は、その名称を(括弧)に記入し、「病院、診療所、薬局、訪問看護事業者」のいずれかに〇を付けます。

④請求者の情報は、郵便番号、電話番号、住所、氏名を漏れなく記入し、印鑑を押します。

 

通勤災害に関する事項A(裏面)

①災害時の通勤種別は、「イ:住居から終業の場所への移動、ロ:就業場所から居住への移動、ハ:就業の場所から他の就業の場所への移動、ニ:イに先行する住居間の移動、ホ:ロに後続する住居間の移動」のいずれかに〇を付けます。

通勤の定義
労災保険において、 通勤は次のように定義されています。 ①住居と終業の場所との間の往復 ②厚生労働省令で定める終業の場所から他の就業の場所への移動 ③①の往復に先行し、または後続する住居間の移動 上記のような往復や移動の経路から逸脱または中断すると、通勤災害と認められなくなる場合があります。

②負傷又は発病の年月日及び時刻は、通勤災害が発生日時を記入します。

③災害発生の場所④終業の場所は、いずれもそのまま記入します。

⑤就業開始の予定年月日及び時刻⑥住居を離れた年月日及び時刻は、いずれもそのまま記入します。

出勤時の災害
通勤災害が出勤時に発生した場合は、「就業開始の予定年月日及び時刻」および「住居を離れた年月日及び時刻」を記入し、退勤時に発生した場合は、「就業終了の予定年月日及び時刻」および「就業の場所を離れた年月日及び時刻」を記入します。

 

通勤災害に関する事項B(裏面)

①災害時の通勤の種別に関する移動の通常の経路、方法及び所要時間並びに災害発生の日に住居又は就業の場所から災害発生の場所に至った経路、方法、所要時間その他の状況は、住居⇔就業先までの通常の経路を記入します。交通手段、所要時間、災害の発生場所および時刻がわかるように、イラストなどを用いて記入するといいでしょう。

②通常の通勤所要時間は、住居⇔就業先の片道の所要時間を記入します。

③災害の原因及び発生状況は、労働災害と認定されるかどうかの1つの判断材料になりますので、できるだけ詳細に記入します。特に、労働災害の発生場所、発生時の作業内容、発生時の環境、不安全な状況および有害な状態、労働災害の内容が明確になるように意識して記入します。

*現任者の情報は、災害発生時に被災労働者と一緒にいた者がいた場合に、その者の住所や氏名を記入します。

*転任の情報は、出張における移動時などに災害が発生した場合に記入します。

 

派遣先事業主証明欄および社会保険労務士記載欄(裏面)

被災労働者が派遣労働者の場合、労働災害が派遣先で発生したとしても、派遣元事業主が療養の給付請求書を作成します。そのとき、派遣元事業主が記入した事項に事実と異なる点がないかを、派遣先事業主が証明しなければなりません。

社会保険労務士記載欄は、本申請書などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。

 


 

以上で、療養の給付請求書の作成が終わりました。

「療養の給付請求書(様式第16号の3)」は、通勤災害における療養給付(療養の給付)を受けるときに作成する書類です。一方、業務災害における療養補償給付(療養の給付)を受ける場合には、「療養の給付請求書(様式第5号)」を作成します。また、通勤災害における療養補償給付(療養の費用の支給)を受ける場合には、「療養の費用請求書(様式第16号の5)」を作成します。

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA