健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届・70歳以上被用者月額変更届

 

 

健康保険および厚生年金保険の被保険者の標準報酬月額の随時改定をするときに作成する書類が、「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届・70歳以上被用者月額変更届(以下、被保険者報酬月額変更届)」です。

被保険者報酬月額変更届は、随時改定の要件に該当するに至ったときに、速やかに日本年金機構または健康保険組合に提出しなければなりません。

随時改定は、被保険者が継続した3月間(各月とも賃金支払基礎日数が17日以上でなければなりません)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、現在の標準報酬月額の基礎となった報酬月額に比べて、著しく高低を生じた場合(2等級以上の差)において、必要と認めるときに、その著しく高低を生じた月の翌月から、標準報酬月額を改定することができます。

随時改定の要件をもう少しわかりやすくすると、次のようになります。

  • 固定賃金の変動であること:昇給・降給、ベースアップ・ベースダウン、賃金形態の変更による増減を意味し、休職や残業時間よる手当の増減は含まれません。
  • 変動月以降の継続した3月間のいずれも賃金支払基礎日数が17日以上であること
  • 3月間の報酬の平均月額による標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差があること
井上とまと

固定的賃金の変動だけでは2等級以上の差が生じない場合でも、手当の変動を含めて2等級以上の差が生じれば、随時改定の対象となり得ます。固定的賃金は変動していなければなりませんが、固定賃金だけで2等級以上の差が生じている必要はありません。

井上とまと

3月間のいずれか1月でも賃金支払基礎日数が17日未満の日がある場合には、どれだけ賃金に変動があっても随時改定の対象にはなり得ません。

 

被保険者報酬月額変更届の作成手順

 

それでは、被保険者報酬月額変更届を一緒に作成していきましょう。

今回は、「株式会社 海洋メカニカル」の労働者である「海豚荒美(うみぶたあらみ)」さんと「鮫島牙貴(さめじまきばたか)」さんをモデルに進めていきます。

 

 

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提出者記入欄および社会保険労務士記載欄

①欄外上の日にちを記入するところには、被保険者報酬月額変更届を提出する日を記入します。報酬月額が著しく高低した月の翌月に提出することができます。

②事業所整理番号は、【群市区】の数字と、【記号】の文字を記入します。

事業所整理記号
「数字2桁のカタカナまたは英数4桁以内」や「漢字+ひらがな」など、自治体ごとに異なる形式で表されます。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合は、事業所整理記号は健康保険証に記載された「記号」と変換可能 です。たとえば、「渋2いろは」という厚生年金保険の事業所整理記号は、全国健康保険協会(協会けんぽ)では「64010203」という数字になります。

③提出者の情報は、事業所所在地(郵便番号)、事業所名称、事業主氏名、電話番号を漏れなく記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。

④社会保険労務士記載欄は、本届出などの事務処理を社会保険労務士に委託しているときは、当該欄にその氏名を記入します。

 

被保険者①の情報A

①被保険者整理番号は、そのまま記入します。

被保険者整理番号
社会保険に加入したときに、会社内で1番から順に従業員に割り当てる番号です。新入社員など、新しく健康保険証を発行する場合は、直前に社会保険に加入した従業員の次の番号を採番します。従業員に被扶養者がいる場合は、従業員と同じ番号を割り当てます。

②氏名は、被保険者の氏名を記入します。

③生年月日は、被保険者の生年月日を記入します。元号は「3:大正、5:明治、7:平成、9:令和」のいずれかの番号を記入し、-ハイフンの後に年月日を記入します。海豚荒美さんは昭和60年6月6日生まれですから、ここでは「5-600606」と記入します。

④改定年月は、本届出における情報や報酬月額が適用される年月を記入します。

随時改定の適用年月
随時改定の規定によって決定された標準報酬月額は、報酬月額が著しく高低した月の翌月~定時決定(毎年8月)までの各月に適用されます。ただし、7月~8月に随時改定を行った場合は、直近の8月月ではなく、翌年の8月まで適用されます。

⑤従前の健康保険の標準報酬月額および従前の厚生年金保険の標準報酬月額は、いずれも従前(定時改定前)の情報を記入します。

⑥従前改定月は、今回の定時改定前の改定月を記入します。

井上とまと

前回の定時改定の後に、随時改定などが行われなかった場合には、前年の9月と記入します。一方、前回の定時改定の後に、随時改定などが行われた場合には、その随時改定月を記入します。

⑦昇給・降給は、昇給および降給が発生する・発生した月を記入し、「1:昇給、2:降給」のいずれかの番号に〇を付けます。

 

被保険者①の情報B

①給与支給月は、報酬月額が変動した月から続く3か月を記入します。10月に昇給したため、ここでは「10、11、12」と記入します。

②給与計算の基礎日数は、そのまま記入します。

井上とまと

月給者の場合は当月の暦日となることが多く、日給者や時給者の場合は勤務日数となります。また月給者の場合でも、就業規則などにより欠勤日を給与計算の基礎日数から引く場合もあります。

③報酬月額【通貨によるものの額】④報酬月額【現物によるものの額】⑤報酬月額【合計】は、いずれもそのまま記入します。報酬月額は、社会保険料などを控除する前(源泉徴収前)の額を記入します。現物によるものがある場合には、備考欄の「9:その他」にその内容を記入します。

⑥総計は、各月の⑤の額の合計を記入します。

⑦平均額は、⑥の額を3で除した額を記入します。1円未満は切り捨てます。

⑧備考は、「1:70歳以上被用者月額変更、2:二以上勤務、3:短時間労働者、4:昇給・降給の理由、5:健康保険のみ月額変更、6:その他」のいずれか該当するものすべてに〇を付けます。

備考の区分
70歳以上被用者月額変更:70歳以上被用者に該当する場合に〇を付けます。厚生年金保険において70歳以上労働者は(当然)被保険者とはなりませんが、一定の要件を満たすことで70歳以上被用者として被保険者の資格を継続せることができます。
二以上勤務:被保険者が2か所以上の適用事業所で勤務している場合に〇を付けます。同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者の報酬月額は、各事業所の報酬を合算した額を報酬月額とします。
短時間労働者:該当する場合に〇を付けます。本来であれば、報酬月額に変動があった月以後の3月間に、賃金支払基礎日数が17日未満である月があるときは、随時改定は行いませんが、4分の3基準を満たさない短時間労働者は、賃金支払基礎日数の要件が「11日未満」に緩和されます。
昇給・降給の理由:番号に〇を付け、(括弧)に昇給・降給の理由を記入します。固定的賃金の変動であることがわかるように記入します。
健康保険のみ月額変更:健康保険に加入していた被保険者が、70歳到達時の契約変更等の理由により健康保険のみ月額変更となる場合(70歳以上被用者月額変更には該当しない場合)に〇を付けます。
その他:その他の特記事項を記入します。現物給付がある場合は、その内容を(括弧)に記入します。

 

被保険者②の情報A

①個人番号は、マイナンバーカードに記載されている12桁の番号を記入します。記入する際は必ず本人確認を行ってください。70歳以上の被用者のみ記入します。

②遡及支払額は、遅配分の給与や昇給が遡ったときに、対象月内の通常の給与以外の(遅れて支払われた)報酬がある場合に、その支払われた月と額を記入します。

 

被保険者②の情報B

①総計は、報酬月額【合計】の合計額を記入します。

②平均額は、②を3で除した額となります。1円未満は切り捨てます。

③修正平均額は、①から前述の「遡及支払額」を減じた額を3で除した額となります。

井上とまと

修正平均額は、遡及支払額がない場合には記入しません。

 


 

以上で、被保険者報酬月額変更届の作成が終わりました。

被保険者報酬月額変更届は、社内で一斉に固定的賃金の昇給・降給したり、ベースアップ・ベースダウンをしたりする場合には、多くの被保険者が対象となるため、労働者が多い事業所では膨大な数の情報を記入しなければならなくなります。

そのため、労働者が多い事業所では、電子申請を利用するといいでしょう。

 

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