専門業務型裁量労働制に関する協定届

 

 

専門業務型裁量労働制を採用するときに作成する書類が、「専門業務型裁量労働制に関する協定届」です。

専門業務型裁量労働制を採用する場合は、必ず労使協定を締結しなければなりません。また、専門業務型裁量労働制に関する協定届は、その協定で定める労働時間の長さに関わらず、行政官庁に届け出なければなりません。

専門業務型裁量労働制は、「業務の性質上、その遂行の方法を大幅にその業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、その業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務(対象業務)」に就いた労働者に適用できます。

対象業務は労働基準法施行規則において、次のように列挙されています。

  • 新商品もしくは新技術の研究または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
  • 情報システムの分析または設計の業務
  • 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
  • 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  • 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
  • その他厚生労働大臣が指定する業務:コピーライター、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲーム用のソフトウェアの創作、証券アナリスト、金融商品の開発、学校教育法に規定する大学における教授研究、公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士
井上とまと

上記以外の業務に就く場合は、専門業務型裁量労働制を適用することはできません。

 

専門業務型裁量労働制に関する協定届の作成手順

 

それでは、専門業務型裁量労働制に関する協定届を一緒に作成していきましょう。

今回は、「株式会社 ヤマノ金属」の代表取締役である「山野金男(やまのかねお)」さんと、労働者の代表である「河野鉄男(かわのてつお)」さんをモデルに進めていきます。

 

 

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事業の情報

①事業の種類は、労災保険率適用事業細目表に記されている「事業の種類」の中から、その事業所に該当するものを選んで記入します。株式会社 ヤマノ金属は、自動車用の金属部品を製造しています。そのため、事業の種類は「金属材料品製造業」と記入します。

②事業の名称は、その事業所の名前を記入します。ここでは「株式会社 ヤマノ金属」と記入します。

③事業の所在地は、事業所がある場所の住所を記入します。

事業所の所在地
店舗、社屋、事務所などを持つ場合は、事業の所在地はその店舗などがある住所を記入します。一方、店舗などを持たずに事業を経営している場合(フリーランスなど)は、自宅などの主たる活動拠点を記入します。

 

協定の対象

①業務の種類は、専門業務型裁量労働制の対象となる業務を記入します。ヤマノ金属では、「新製品の開発」に当たる人を対象としています。

②業務の内容は、上記の「業務の種類」の業務内容の詳細を記入します。新製品の開発に当たる人の業務内容は、「自己の研究に基づき新製品を開発すること」です。

井上とまと

業務の種類、業務の内容は前述の「対象業務」から外れないように注意しましょう。

③該当労働者数は、上記の「業務の種類」を担当する労働者数を記入します。また、満18歳未満の者は(括弧)内に記入します。ヤマノ金属では、「5人」の労働者が専門業務型裁量労働制の対象となります。

 

協定の内容

①1日の所定労働時間は、就業規則などで定められている労働時間を記入します。ヤマノ金属の所定労働時間は「8時間」です。法定労働時間と所定労働時間の違いについては、事業場外労働に関する協定届の記事を参照してください。

②協定で定める時間は、専門業務型裁量労働制に係る労使協定で定められた労働時間を記入します。専門業務型裁量労働制が適用された労働者は、実際の労働時間が何時間であろうとも、「協定で定める時間」労働したとみなされます。ヤマノ金属の協定で定める時間は「9時間」です。

法定労働時間以上の労働時間
専門業務型裁量労働制に係る労使協定において、 専門業務型裁量労働制の労働時間を法定労働時間以上の時間を設定することもできます。しかし、その場合は「36協定」という法定労働時間を超えて労働させることができるようにする別の協定も結ぶ必要があります。

③労働者の健康及び福祉を確保するために講ずる措置④労働者のからの苦情の処理に関して講ずる措置は、労使協定の内容をそのまま記入します。

労働者の保護措置
専門業務型裁量労働制は、使用者が業務の遂行の方法や時間配分の決定をしないゆえに、やもすると過剰労働になることもあります。そのため、専門業務型裁量労働制に関する労使協定を締結するときには、労働者の健康及び福祉を確保するために講ずる措置、労働者のからの苦情の処理に関して講ずる措置を定めておかなければなりません。
井上とまと

どちらも具体的な措置を記入するようにしましょう。

⑤協定の有効期間は、「その起算日からの期間」というかたちで記入します。労使協定の有効期間に、法律上の制限はありませんが、1年間に設定するところが多いようです。

 

欄外下A

①時間外労働に関する協定の届出年月日は、36協定を届け出た日にちを記入します。

②協定の成立年月日は、労使協定が成立した日を記入します。

③代表する者の職名・氏名は、労使協定を締結するときの労働者側の代表者の所属している事業所名、職名、氏名を記入し、その横に代表する者の印鑑を押します。

④選出方法は、労働者側の代表者の選出方法を記入します。

 

欄外下B

①欄外下の日にちを記入するところには、専門業務型裁量労働制に関する協定届を提出する日を記入します。

②左端の「___労働基準監督署長 殿」には、その事業所の住所がある地域を管轄する労働基準監督署(長)の名称を記入します。ヤマノ金属は、埼玉県草加市栄町にありますから、ここでは「春日部」と記入します。

③使用者の情報は、事業所の名称、事業主の職名、事業主の氏名を記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。

 


 

以上で、専門業務型裁量労働制に関する協定届の作成が終わりました。

専門業務型裁量労働制は、使用者が業務の遂行の方法や時間配分の決定をせず、労働者の裁量に委ねることを前提に、その業務が対象であること、健康及び福祉を確保するために講ずる措置講じられていること、苦情の処理に関して講ずる措置が講じられていることことにより適用されます。

また、健康及び福祉を確保するために講ずる措置、苦情の処理に関して講ずる措置の2つの措置については、単に講じておくだけでなく、その記録を3年間保存しておかなければなりません。

井上とまと

記録は労働者ごとに保存します。

 

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