1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届
1箇月単位の変形労働時間制を(労使協定を締結して)採用するときに作成する書類が、「1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届」です。
ただし、1箇月単位の変形労働時間制は、労使協定を締結しなければ採用できないというわけではありません。就業規則などに明記することによっても採用することができます。就業規則などに明記する場合は、1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届を作成する必要はありません。
1箇月単位の変形労働時間制とは、労働時間を弾力的に変形する制度で、「特定された週において40時間または特定された日において8時間を超えて労働させることができる」と規定されています。
労働基準法における法定労働時間は、「休憩時間を除き1週間に40時間(特例措置の対象になる事業は44時間)、1日に8時間を超えて労働させてはならない」と規定されています。1箇月単位の変形労働時間制を採用することで、使用者は変形期間(特定された1箇月以内の一定期間)において、法定労働時間の規定を緩めて労働者を使用することができるようになります。ただし、変形期間を平均した1週間当たりの労働時間が、法定労働時間(週40時間または44時間)を超えてはなりません。
「特定された週」または「特定された日」のことを変形期間といい、変形期間は1か月以内の期間であれば「2週間」や「20日」とすることもできます。
1箇月単位の変形労働時間制を(労使協定を締結して)採用する場合は、1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届を行政官庁に届け出るとともに、有効期間を定めなければなりません。
1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届の作成手順
それでは、1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届を一緒に作成していきましょう。
今回は、「株式会社 ヤマノ金属」の代表取締役である「山野金男(やまのかねお)」さんをモデルに進めていきます。
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事業の情報
①事業の種類は、労災保険率適用事業細目表に記されている「事業の種類」の中から、その事業所に該当するものを選んで記入します。株式会社 ヤマノ金属では、自動車用の金属部品を製造しています。そのため、事業の種類は「金属材料品製造業」と記入します。
②事業の名称は、その事業所の名前を記入します。ここでは「株式会社 ヤマノ金属」と記入します。
株式会社 ヤマノ金属は「法人」です。そのため、法人格も記入します。
③事業の所在地は、事業所がある場所の住所を記入します。
事業の所在地 店舗、社屋、事務所などを持つ場合は、事業の所在地はその店舗などがある住所を記入します。一方、店舗などを持たずに事業を経営している場合(フリーランスなど)は、自宅などの主たる活動拠点を記入します。 |
④常時使用する労働者数は、1箇月単位の変形労働時間制に関する協定を締結した時点の常時使用する労働者の数を記入します。ヤマノ金属の常時使用する労働者は「45人」です。
常時使用する労働者 常態として働いている者という意味です。たとえば、常に7人の労働者を雇用していて、繁忙期の2~3か月だけ増員する場合の「常時使用する労働者数」は、7人となります。また、労働者には、あらゆる雇用形態の労働者が含まれますが、前文のように繁忙期だけ雇用する労働者は含まれません。 |
協定の対象
①業務の種類は、1箇月単位の変形労働時間制の対象となる業務を記入します。ヤマノ金属では、「金属材料品の製造」を担当する労働者が、1箇月単位の変形労働時間制の対象となります。
金属材料品の製造以外の業務(事務など)は、1箇月単位の変形労働時間制の対象となりません。
②該当労働者数は、上記の「業務の種類」を担当する労働者数を記入します。また、満18歳未満の者は(括弧)内に記入します。ヤマノ金属の金属材料品の製造を担当する労働者は「30人」です。
協定の内容
①変形期間は、1箇月単位の変形労働時間制の対象となる期間を記入します。最大1か月です。また、(括弧)にはその起算日(変形期間の最初の日)を記入します。
②変形期間中の各日及び各週の労働時間並びに所定休日は、簡潔に記入できる場合には、当該欄に記入しても構いません。しかし、労働時間や所定休日は複雑になりがちですから、勤務表などを添付するかたちにしても構いません。
③協定の有効期間は、1箇月単位の変形労働時間制の対象となる期間の起算日から最終日の日にちを記入します。
1箇月単位の変形労働時間制を(労使協定を締結して)採用する場合には、有効期間を定めなければなりません。制度上、有効期間は1か月以内の期間となるため、制度を継続する場合は、少なくとも1か月ごとに1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届を作成し、行政官庁に届け出なければなりません。
労働時間の上限
①労働時間が最も長い日の労働時間数、②労働時間が最も長い週の労働時間数は、それぞれそのまま記入します。また、(括弧)には満18歳未満の者の労働時間の上限を記入します。ヤマノ金属では、変形期間中において1日最大「8時間」労働させることができ、1週間最大「48時間」労働させることができます。
欄外下A
①協定の成立年月日は、1箇月単位の変形労働時間制に係る労使協定が成立した日を記入します。
②代表する者の職名・氏名は、労使協定を締結するときの労働者側の代表者の所属している事業所の名称、代表者の職名および氏名を記入し、代表者の印鑑も押します。
③選出方法は、労働者側の代表者の選出方法を記入します。
労働者側の代表者の選出方法 労働基準法に「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」と規定されています。民主的な手続きが取られていることが大切です。 |
④2つのチェックボックスは、それぞれの事項に該当していたら、□に✓を入れてください。労使協定が正常に締結されていれば、問題なく✓が入ります。
欄外下B
①欄外の日付を記入するところには、1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届を提出する日を記入します。
②左端の「___労働基準監督署長 殿」には、事業所がある地域を管轄する労働基準監督署(長)の名称を記入します。ヤマノ金属は、埼玉県草加市栄町にありますから、ここでは「春日部」と記入します。
③使用者の情報は、事業所の名称、事業主の職名、事業主の氏名を記入し、事業所または事業主の印鑑を押します。
以上で、1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届の作成が終わりました。
1箇月単位の変形労働時間制は、労使協定を締結しなくても採用することができます。むしろ、就業規則などに明記することで採用する場合の方が多いです。
一方、その他の変形性労働時間制(フレックスタイム制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的労働時間制)では、必ず労使協定を締結しなければなりません。